もはや大排気量マルチシリンダーエンジンは風前の灯火か?
ベントレーは、クルーにあるカーボンニュートラルなベントレーの工場でW12エンジンを一つ一つ手作業で組み立て、テストしている22人の熟練工全員を再教育し、再配置する予定だ。また、W12エンジンの生産施設は、プラグインハイブリッドモデルに使用される他のベントレーエンジンのための拡張ラインに移行する予定だ。
2003年に6.0LツインターボのW12エンジンが初めて導入されて以来、クルーのエンジニアリング チームは、パワー、トルク、排気ガス、洗練性の面でエンジンの性能を継続的に向上させてきた。この20年間で、出力は37%、トルクは54%向上しながら、排気ガスは25%削減された。当初は、制御システムの進化と最適化、オイルや冷却設計の改善、ターボチャージャー技術、より効果的な噴射・燃焼プロセスによってこれらを実現した。
だが2015年のベンテイガの発売にあたり、W12は完全に再設計され、気筒休止、直噴およびポート噴射、ツインスクロールターボを特徴とするエンジンとなり、現在もこのバージョンが生産されている。
W12エンジンは、職人の手によって6.5時間かけて組み立てられ、その後、3台の専門診断機によって1時間以上にわたる高度なテストが行われる。毎週、1台のエンジンが長時間のテストサイクルで運転され、検査のために完全に分解される。
そんな「職人技術の塊」のようなW12エンジンも、カーボンニュートラルや電動化の波に押され、退陣を余儀なくされる。もはや、大排気量のマルチシリンダーエンジンは、どこのメーカーにおいても生産縮小もしくは終了を迎えているのは、時代の流れからして仕方ないことなのかもしれない。
ちなみに、ベントレーのW12エンジン工場は、2023年にその生産開始から20周年を迎えるころには10万5000基以上のエンジンを納品してきたことになるという。