待望のRモデルが加えられたゴルフシリーズだが、それに先行する形で新世代「R」はまずSUVで登場した。2021年5月にマイナーチェンジされたティグアンに「R」が設定され、日本にRモデルが復活。そして22年7月、やはりマイナーチェンジ実施と同時にTロックにも「R」が設定されてゴルフR導入への準備が整った。(Motor Magazine2023年3月号より)

サーキットも走りたくなるダイナミックな動力性能

しかし、実際にアクセルペダルを深く踏み込んでみれば、どちらもとても2Lという排気量から生み出されるとは思えない圧倒的な加速力を味わわせてくれる。ただそのような強力な加速は、やはりターボのブースト圧が頼りという印象も共通で、活発な走りを楽しみながら走行しているとオンボードコンピューターが示す燃費データが昨今の2Lターボモデルの期待値を明確に下回るのもひとつの特徴だ。いずれも、走り方次第で燃費がかなり大きく変化する特性の持ち主と言えそうだ。

画像: ティグアン R。4車の中ではもっとも重量級(1750kg)だが、それを感じさせない上質かつパワフルなドライビングを楽しめる。

ティグアン R。4車の中ではもっとも重量級(1750kg)だが、それを感じさせない上質かつパワフルなドライビングを楽しめる。

ディフューザーを彷彿とさせるデザインのリアバンパー形状や、その左右端で存在感を放つ4本出しのテールパイプ、さらには見方によっては「SUVらしからぬ」という声も聞かれそうな大径で薄いタイヤ&ホイールを履くことなどから、見る人が見れば、オンロード上での高い走りのパフォーマンスを狙ったモデルであることは隠しようがない。

加えて、昨今の多くの輸入SUV勢の中にあっては両車とも比較的押し出し感が薄く、さらに攻撃性も低く感じられるエクステリアデザインも、フォルクスワーゲンのSUVのひとつの特徴と言えそうな大きなポイントである。

それもあって、日本に導入される同ブランドのSUVではフラッグシップとなるティグアンでも、全般にボリューム感は控えめと感じられる。ただし、4520mmという全長はともかく、全幅は1860mmもあり、全高も1675mmとやはりそれなりに大きいことは確かだ。とくにTロックと並べてみるとそれは明快で、それでもその走りの実力は「ちょっとサーキットを走らせてみたいな」と思わせてくれるものなのだから、さすがは「R」モデルだといえる。

ティグアンRからTロックRに乗り換えると、やはりまず身軽さが増した印象を感じられることになる。路面への当たり感はちょっとハードだが、それでも走行モードで「コンフォート」を選択すれば、むしろティグアンRよりもこなれた乗り味が提供される。

これは、同じ大径ながらもティグアンの35%偏平17インチのタイヤ&ホイールに対して、Tロックは40%偏平の19インチと、よりエアボリュームを確保しやすいであろうスペックを装着していることとも関係がありそうだ。

身軽さではTロックが優位ダイナミックなティグアン

日本の山岳地帯に多いタイトなワインディングルートに進入すると、ティグアンでは「もうちょっと舵が早ければ良いのに・・・」と思えた取り回しの感覚はやはりTロックの方が身軽なテイストだ。

画像: Tロック R。日本導入台数が少量ゆえWLTCモードの測定値はないが、実走時の燃費はゴルフRにほぼ近い値だった。

Tロック R。日本導入台数が少量ゆえWLTCモードの測定値はないが、実走時の燃費はゴルフRにほぼ近い値だった。

そうした印象は、ステアリングシステムのギア比に起因すると言うより、むしろとはいえTロックの方が全幅が小さく、限られた車線幅の中で相対的によりトレースラインを自由に選択しやすいという点によるところが大きいのかもしれない。とくに日本という条件下では、サイズの小ささも走りのパフォーマンス向上に直結する見逃せない条件である。

一方、より雄大な舞台に身を投じてみると、そこでは改めてさまざまな面で、より余裕に富んだティグアンRの良さが輝いてくる。

中でも車線の幅にゆとりがあって見通しも良く、コーナー後半にかけて積極的に右足を踏み込んで行けるようなシーンに遭遇するとリアアクスルに2組の多板クラッチを用いたベクタリングシステムを備える「Rパフォーマンストルクベクタリング」の効果を生かした、コーナーの頂点を通過した後に徐々にハンドルを戻していくことができる、SUVらしからぬダイナミックな走りのプロセスがなかなかの気持ち良さを生み出す。

いずれにせよ、たとえSUVでも「走り」に対する熱い想いには、ただ一点の淀みも感じさせられることがない。これは「R」という称号が与えられたティグアンとTロック、そしてもちろんゴルフにも共通するスピリットなのだ。(文:河村康彦/写真:井上雅行)

フォルクスワーゲン ティグアン R 主要諸元

●全長×全幅×全高:4520×1860×1675mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1750kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:235kW(320ps)/5350-6500rpm
●最大トルク:420Nm/2100-5350rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・61L
●WLTCモード燃費:10.8km/L
●タイヤサイズ:255/35R21
●車両価格(税込):733万7000円

フォルクスワーゲン Tロック R 主要諸元

●全長×全幅×全高:4245×1825×1570mm
●ホイールベース:2590mm
●車両重量:1540kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1984cc
●最高出力:221kW(300ps)/5300-6500rpm
●最大トルク:400Nm/2000-5200rpm
●トランスミッション:7速DCT(DSG)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●WLTCモード燃費:-
●タイヤサイズ:235/40R19
●車両価格(税込):627万7000円

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