新たに登場したBEVのID.4。実際に乗ってみると、その世界観はごく普遍的な地平に落ち着く。何よりもスペシャルであることが追求された、かつてのRモデルとは似て非なる個性だと言える。BEVの本質は特別さではなく普遍性にある、とフォルクスワーゲンは考えているのだろう。(Motor Magazine2023年3月号より)
誠実に「ちょっと特別」であるスタンスは、RとID.の共通ポイント
そしてID.4だが現時点ではBEVということでまだ「ちょっと特別な存在」に見える。しかし乗った感じは、あくまでもフォルクスワーゲンのラインナップの中に溶け込める「普通の存在」だ。
各種パワートレーンが選べる時代がやってきて、他のフォルクスワーゲン車から乗り換えても何ら違和感なく操れる、ということが重要視されていて、ID.4が目指したのは「BEVのゴルフになること」のように感じられたのだ。
エネルギーの供給方法も違えば出足の感覚も違う、そしてサウンドも違うと、従来のエンジン車と比べれば違うところだらけだ。さらにパフォーマンス的には、ID.4「R」が出たらTロック Rと肩を並べられそう、という印象。
「特別な存在」という意味ならばむしろID.バズの方が近いかもしれない。ただそう思えるのは、ID.4にフォルクスワーゲンとしてレベルの高い「普通の存在」が担保されているからこそ。実は「普通」であることが、一番凄いのである。(文:竹岡 圭/写真:伊藤嘉啓)