2015年東京モーターショーに展示されていた耕耘機F90がきっかけ
──それでホンダのパワープロダクツだったのですね。
高久氏 「2015年の東京モーターショーのホンダブースに、1996年に登場した耕耘機F90が展示されていたのを見て、衝撃を受けました、ホンダはこんな耕耘機を作っていたのか、カッコいい、と。そこで調べてみると、ホンダの耕耘機の歴史は古く、1950年代には女性や高齢者にも扱いやすい耕耘機の開発に着手、1959年に最初の耕耘機『F150』を発売しています。
東京モーターショーのブースにあった『耕耘機F90』はその後のモデルですが、ノスタルジックだけどメカニカルで近代的にも見えるし、これでいこうということを決めました。そこでホンダに商品化を提案させていただいたら、ホンダパワープロダクツもVI(ビジュアルアイデンティティ)の変更などリプランディングを行うにあたり、プラモデルかミニカーを制作しようと考えていたようで、話が一気に進みました」
──『みのり』ちゃんはどのように誕生したのですか。
高久氏 「我が社の『ミニマムファクトリー』シリーズはフィギュアがあっての商品ですから、耕耘機F90と組み合わせるキャラクターをイラストレーターの山下しゅんや氏にお願いしたことで誕生しました。オーバーオールを着て、長靴を履いた健康的な女の子が耕耘機F90を運転しているという情景をイメージしています。『みのり』という名前は、山下さんとイメージを話しているうちに自然と決まりました」
──制作は順調でしたか。
高久氏 「いいえ、耕耘機F90に関する資料はまったく残っていないし、開発担当者もわからず、実車を頼りに、寸法を測ったり、何度も確認して再現するしかありませんでした。ホンダコレクションホールに実車が現存していたのが救いでした。女の子のフィギュアは得意ですが、耕耘機をプラモデルで制作するのは初めてだったので難しかったですね。
そういえば、発売を前に静岡ホビーショーで試作品をお披露目したのですが、その時、ブースに実車の耕耘機F90を展示していただいたこともありまして、反響が凄かったですね。1964年の耕耘機が会場にあって、そのプラモデルが登場するというのですから前代未聞の出来事でした」
──発表後の反響も凄かったのではないですか。
高久氏 「おかげさまで、2018年に発売を開始して以来、2023年2月に3回目の再販を開始しました。途中、耕耘機F90に水田車輪を装着したバージョンも発売しました。みのりちゃんとは顔も髪型も違う、いなほちゃんが稲作にチャレンジするという設定です」