レヴァンテに続くマセラティの第2弾となるSUVがグレカーレだ。アルファロメオでも定評のある「ジョルジョ」プラットフォームを使うことで、妥協のない走りを実現したという。(Motor Magazine 2023年4月号より)

動きが正確で鋭いグレカーレ。レヴァンテは落ち着いた走り

日本仕様のグレカーレに試乗するのは、今回が2回目。最初にハンドルを握ったときは、ランニングインが不十分だったのか足まわりの動き方がややぎこちなく感じられたものの、今回はよりスムーズにストロークするようになっており、低速域での乗り心地が改善されていた。

画像: グレカーレGT。ハンドルの左側スポーク下にエンジンスイッチを配置。インフォテインメント画面は12.3インチ、その下に8.8インチの操作用タッチパネルを配置されている。

グレカーレGT。ハンドルの左側スポーク下にエンジンスイッチを配置。インフォテインメント画面は12.3インチ、その下に8.8インチの操作用タッチパネルを配置されている。

けれども、イタリアで試乗したグレカーレはさらにしなやかな足まわりを備えていたのも事実。その原因が個体差なのか、それとも走り込むにつれて自然と解消するものなのかは、もう少し状況を見極めたいところだ。

レヴァンテは、車重が重いせいか、グレカーレよりも一段とどっしりした印象を受ける。また、初期型に比べると乗り心地の進化は著しく、ボディ剛性感の向上とあいまって一段とカッチリした走りが味わえるようになった。それでも基本設計の古さは隠しようがなく、荒れた路面を強行突破すると、ボディ後半部分が軽く横揺れする現象が認められたことも付け加えておこう。

これに比べれば、グレカーレはボディ剛性が圧倒的に高く、その走りからは強いソリッド感が伝わってくる。ステアリングフィールがより澄んでいて、路面からの微振動がシャットアウトされているように思えるのも高剛性ボディのおかげだろう。しかも、ハンドルを通じて感じられる接地感は良好である。レヴァンテのステアリグフィールも決して悪くはないけれど、グレカーレに比べると雑味成分がやや多く、基本設計がひと世代古いことを思い知らされる。

走り出しの軽快感も、グレカーレがレヴァンテを上回った。グレカーレは発進時の蹴り出しが鋭く、アクセルペダルを踏み込むと同時に「パンッ!」と直ちに動き出すように感じられるのだ。

一方のレヴァンテも決して動きが鈍重なわけではないが、レスポンスの点では一歩及ばない。もっとも、発進時の軽快感はグレカーレが例外的に良好なだけで、ライバルとの比較でいえばレヴァンテも十分に軽快に感じられるはずだ。

全長はレヴァンテがグレカーレを20cmほど上回っていることは前述のとおりだが、後席のスペースではグレカーレが意外にも健闘。ひざ周りの広さは3〜4cmほどの差ながら、グレカーレがレヴァンテを凌いだ。この辺は、ややアップライト気味に座らせるグレカーレの着座姿勢が効いているのかもしれない。

一方、ラゲッジスペースの広さではレヴァンテが優勢で、奥行き、幅ともに10cmほどレヴァンテの方が余裕があった。

日本のワインディングにもフィットする「リズム」を感じる

いずれにせよ、本当の意味で2台の価値がはっきりと感じられたのは、試乗の舞台をワインディングロードに移してからだった。

画像: レヴァンテGT。インパネの時計はアナログ式。オーディオはBowers&Wilkins製だ。

レヴァンテGT。インパネの時計はアナログ式。オーディオはBowers&Wilkins製だ。

正直に言って、市街地や高速道路でレヴァンテやグレカーレの走りの味がライバルを明確に凌いでいるとは思えなかった。たしかに、2台ともに乗り心地はそれほど硬くなく、まずは快適といっていいだろう。それでも、路面からのゴツゴツというショックをもっと効果的に吸収してしまうライバルは他にも存在するし、フラット感をより巧みに演出するモデルだって他にないことはない。

その意味で言えば、レヴァンテとグレカーレの2台は、日常的なシーンでの乗り心地が中庸というか、明確な個性が感じられないと言えなくもない。

しかし、ワインディングロードではとにかくその正確なハンドリングが強く印象に残った。どんなコーナーに対しても、自分が思い描いたとおりのラインで進入していけるし、微妙なハンドル操作に対しても常に的確に反応してくれる。しかも、路面の不整で進路が乱されることはなく、一度ハンドルを切れば、あとはその舵角を維持するだけでコーナーをクリアできる。これほどストレスなくワインディングロードを駆け抜けられるSUVは、滅多にないと言っていいだろう。

なかでもグレカーレはコーナーに進入する体勢を素早く整えてくれるので、まるでスポーツカーのように軽快なリズムを保つことが容易。これに比べるとレヴァンテはやや重心が高い印象で、コーナーの入り口で姿勢が落ち着くまでにワンテンポ待つ必要がある。この辺は、単に重心が高いか低いかだけでなく、クルマがロールする際の軸となるロールセンターの設定も関係しているはずだ。

なるほど、ドイツ製ライバルのなかにも見事なコーナリングを示すSUVは存在する。けれども、彼らの本領が発揮されるのは高速コーナーでのスタビリティであって、日本の典型的なワインディングロードでは速度域が低すぎてもどかしいと思うことがなきにしもあらず。それがレヴァンテとグレカーレは、我々がよく体験するタイトなコーナーでも機敏な身のこなしを示し、リズミカルな走りが味わえるのである。

走りだけでなく内外装にもときめきを感じる

そんなワインディングロードでの魅力を堪能したあとで改めて2台のデザインを見つめ直せば、クラシカルなスタイルのなかに毅然とした美しさが折り込まれていて、ふと引き込まれそうになる。

画像: 独自の世界観を表現した内外装には走りへの情熱が散りばめられている。(左:レヴァンテGT、右:グレカーレGT)

独自の世界観を表現した内外装には走りへの情熱が散りばめられている。(左:レヴァンテGT、右:グレカーレGT)

とりわけマセラティの最新デザイン言語で描かれたグレカーレは、一見したところシンプルだが、ひとつひとつの面やラインがていねいに吟味されていて、実に純度の高い造形美が表現されている。きっと、長い歳月を経ても美しさが色あせないタイプだろう。

同様のことはインテリアについても言える。マセラティのクオリティ感が急速に改善されていることはグレカーレを見れば明らかだが、デビュー7年目を迎えたレヴァンテも大幅に改善されたように思う。いずれにせよ、そのレザーをはじめとする内装材の繊細な色合いは、ファッションの世界でも高く評価されそうなほど魅力的なもの。走りの奥深い味わいを含め、さまざまな経験を積み重ねた大人にこそお勧めしたいSUVだと言える。(文:大谷達也/写真:井上雅行)

マセラティ グレカーレGT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4846×1948×1670mm
●ホイールベース:2901mm
●車両重量:1870kg
●エンジン:直4SOHCマルチエアターボ+電動コンプレッサー+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:220kW(300ps)/5750rpm
●最大トルク:450Nm/2000-4000rpm
●モーター最大トルク:44Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●欧州複合モード燃費:10.8-11.4km/L
●タイヤサイズ:前255/45R20、後295/40R20*
●車両価格(税込):896万円
*標準サイズは前後225/55R19

マセラティ レヴァンテ GT主要諸元

●全長×全幅×全高:5020×1988×1680mm
●ホイールベース:3005mm
●車両重量:2280kg
●エンジン:直4SOHCマルチエアターボ+電動コンプレッサー+モーター
●総排気量:1995cc
●最高出力:243kW(330ps)/5750rpm
●最大トルク:450Nm/2250rpm
●モーター最大トルク:44Nm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・80L
●欧州複合モード燃費:9.3-10.3km/L
●タイヤサイズ:前265/45R20、後295/40R20
●車両価格(税込):1318万円

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