2009年、フランクフルトモーターショーで初代アウディR8クーぺをベースとしたオープンモデル「R8 スパイダー」がワールドプレミアされた。そして翌年2010年3月にはその国際試乗会がドイツで行われている。R8 スパイダーは、TTロードスター、A5カブリオレと同様、ソフトトップを採用していたが、「スパイダー」と名乗るのにはどういう意味があったのか。ここでは国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年5月号より/文:渡辺敏史)

風の巻き込みに対して入念な配慮が施されていた

アウディブランドのフラッグシップとしても君臨するスーパースポーツ、R8に加えられた新たな選択肢。それはランボルギーニ ガヤルドとの血縁もあり、早くから噂にのぼっていたオープンモデルだった。

搭載されるエンジンは昨年(編集部註:2009年)追加されたV10ユニットのみ。これは本国仕様においても変わらない。オープンエアを味わうという目的でいえばV8モデルでも十分なわけだが、あえてそうした背景は、この手のクルマを求めるユーザーの指向やライバルの動向を鑑みてのことだろう。日本においては結果的に、ポルシェ 911ターボカブリオレやフェラーリ カリフォルニアあたりのゾーンを窺うカタチとなる。

スパイダーと名付けられるだけあって一見はペラッと軽そうにみえる幌ではあるが、二層構造で一定の快適性を確保している。その開閉はボタン操作ひとつの全自動で行われ、要する時間は19秒。50km/h以下であれば走行中の開閉も可能となっている。

ちなみにこのシステムの開閉機構を含めての全重量は42kg。特徴的なのはリアウインドウ部が電動で独立開閉可能となっていることで、クローズ時にはそれを降ろしての室内換気に、オープン時に上げておけばディフレクターとしても使うことができる。さらに別途、ワンタッチで脱着ができるネット式のディフレクターも装備するなど風の巻き込みに対しては入念な配慮が施されていた。

しかし昨今のオープンモデルはそのあたりを徹底的に計算し、時にはボディ形状を適正化してまでドラフトストップに努めている。結果、200km/hのレベルまで快適なオープン走行が可能という凄まじい性能を得るに至ったモデルもあるほど。

それらに対すればこのクルマは、風の巻き込みが割と感じられる方といえるだろう。それはクルマの成り立ちからいえば当たり前の話だ。形状を歪めてまでそれを得ることなど考えられないわけである。そのためにスパイダーという、最も簡便かつスポーティなオープンカーの名称が使われていると思えば、そこに目くじらを立てる方が無粋というものである。

画像: 耐水性のあるテキスタイルファブリックを使ったアウタースキンとヘッドライナーから構成される電動油圧式ソフトトップの重量は約30kg。

耐水性のあるテキスタイルファブリックを使ったアウタースキンとヘッドライナーから構成される電動油圧式ソフトトップの重量は約30kg。

屋根が取り払われたことによるASFの剛性強化はサイドシル及び前後バルクヘッド、Aピラー周縁と入念に施されている。その強化に使われる部材もすべてアルミ製。Aピラーには鋳造製の補強剤が内包され、重心位置から離れた部分の極端な重量増を避けるなど気遣われた結果のホワイトボディ重量はクーペ比6kg増の216kgに留められ、重心は若干低くなっているという。

前後の重量配分もクーペと同等の43:57。そしてクワトロシステムによる駆動配分は、通常時は15:85、最大時で30:70のビスカスカップリングを用いたフルタイム方式が採用される。ちなみに、クーペ比の剛性数値に関してアウディのエンジニアは、公式には非公表としながらも、サーキット走行レベルをカバーできる数値はフォローしてあるということだった。

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