クルマは長く乗れば乗るほど見えてくるものがある。これまでいくつものエンジン搭載モデルを長期にわたってレポートしてきたが、今回連載している長期レポートのクルマは電気自動車(BEV)である「DS3クロスバック Eテンス(DS3 CROSSBACK E-TENSE)」だ。(第8回/Motor Magazine 2022年11月号より)

充電不足による出力制限を体験。スマホアプリが不安を和らげてくれる

ところで、クルマを購入してから取扱説明書を読んだことがない、という人もいるのではないだろうか。かくいう、長期レポートを担当するまではそうだったが、最近はディスプレイ表示や操作方法でわからないことがあれば車内で確認、またはパソコンにダウンロードして読む機会も増えた。

その冊子の中に気になる文言があった。「リチウムイオンバッテリーの残量が極端に低下すると(中略)残量警告灯と出力制限警告灯が点灯します」というもの。出力制限とはモーターのパワーを抑え、エアコンも自動停止して走行可能距離を確保する機能だが、どのタイミングで、どれほどパワーダウンするのか、以前から気になっていたのだ。

しかし残量を見誤って停止させては危ないと、試す勇気がなかった。ところが今回偶然に・・・いや、自分の落ち度によって出力制限を体験することになってしまった。

画像: 高速道路のPA/SAに設置されている急速充電器にはよくお世話になっている。人間の休息にもなるし。

高速道路のPA/SAに設置されている急速充電器にはよくお世話になっている。人間の休息にもなるし。

ことの経緯は省くが、目的地の急速充電器までの約10kmを充電残量6%(3kWh)で走らなくてはならないという状況。この時点ですでに残量警告灯は点灯し、残走行可能距離も「---km」になっていた。平均電費から計算すると15kmほど走れるが、5kmのマージンをどれほど信用していいのか判断できない。

走る地域にもよるが、30〜50kmは残しておきたい残走行可能距離

ちなみに、メーター上にバッテリー残量のパーセンテージは表示されず、目盛りを読みながらの「大まかな量」しかわからない。こんな時に頼りになったのがDS公式のスマホアプリ「My DS」で、残量表示だけでなく残距離も「---km」にならず最後まで教えてくれる。iOSとAndroidにインストールできて、ICE搭載モデルにも対応するのでオーナーであれば入手してみては?

画像: 最近のスマホのバッテリー容量はおよそ10〜15Whと言われているので、「1%=約500Wh」が、どれだけ危ない状況か理解いただけるだろう。

最近のスマホのバッテリー容量はおよそ10〜15Whと言われているので、「1%=約500Wh」が、どれだけ危ない状況か理解いただけるだろう。

話を元に戻すと、出力制限が機能したのは残量わずか1%になったときのことで、メーターに警告文やオレンジ色のカメのアイコンを表示するとともにエアコンは停止、モーターパワーもダウンした。

とはいえ、その力感はエコモードで走行するより少し弱い程度で、一般道のクルマの流れに乗るのはまったく問題ないし、アクセルペダルを強めに踏み込めばスムーズに60km/hまで加速してくれる。ただし取扱説明書に「出力が徐々に制限され・・・」と書かれているとおり、充電残量が減っていけば段階的にさらにパワーダウンしていくものと思われる。

公道上で停止してしまっては危険なうえに迷惑をかけることになるので、追加のテスト走行はせず急速充電器の元へ向かった。結局、バッテリー残量警告灯が表示されてから12km、満充電にしてから279km走行していたことになる。これほど肝を冷やした走行はもう勘弁願いたい。長距離移動するにしても、250kmを限度にしようと誓った出来事だった。

第8回/2022年8月23日〜9月20日(10カ月目)のデータ
・オドメーター:1万5436km
・当月の走行距離:2396km
・充電量:約429.0kWh(充電メーター換算値)
・電費:約5.59km/kWh
・充電回数:19回(内、200V普通充電を13回/急速充電を6回)

DS3クロスバック Eテンス 主要諸元

●全長×全幅×全高:4120×1790×1550mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1580kg
●モーター:交流同期電動機 ZK01型
●最高出力:100kW(136ps)/5500rpm
●最大トルク:260Nm/300-3674rpm
●バッテリー総電力量:50kWh
●JC08モード航続距離:398km
●0→100km/h加速:8.7秒
●最高速度:150km/h
●駆動方式:FWD
●タイヤサイズ:215/55R18
●車両価格:559万3000円(2023年5月現在)

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