2010年3月のジュネーブオートサロンで2代目ポルシェカイエン(958)がワールドプレミアされて登場した。初代ではまったく新しくSUV市場に参入するため本格的なオフロード性能を備えていることが必要であったが、この2代目では、よりスポーティでポルシェらしい価値の実現へ重点は移された。ここではドイツ・ライプツィッヒで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年7月号より)

動力性能と燃費性能を両立させるハイブリッドの存在意義

続いて試乗したのは、カイエンSハイブリッド。基本システムをトゥアレグハイブリッドと共用するこのモデルは、わかりやすく言えば、アウディS4で採用された3L V6スーパーチャージドエンジンの後ろにクラッチ機構を挟み47psのモーターと8速ATを組み合わせたパワーユニットを搭載している。センターデフはトルセン式で、前後駆動力の基本配分は40:60、パワーステアリングは唯一、電動油圧式となる。

画像: ラインナップの中で、ターボに次ぐ高いポジショニングを与えられたカイエンSハイブリッド。ポルシェでハイブリッドモデルを選ぶことができる、という点にも大きな価値がある。なお車重は、カイエンの中で最も重量級となる。

ラインナップの中で、ターボに次ぐ高いポジショニングを与えられたカイエンSハイブリッド。ポルシェでハイブリッドモデルを選ぶことができる、という点にも大きな価値がある。なお車重は、カイエンの中で最も重量級となる。

基本的にスタートは、モーターのみのEVモードである。アクセルペダルをゆっくりと踏めば60km/hまでそのまま行ける設定だが、試乗時はそこに到達する前でエンジンが始動していた。ちなみにEVモードでの走行可能距離は数kmという。

アクセルペダルを深く踏み込んだ加速は、エンジンのスーパーチャージャーによる過給とモーターのアシストが合わさり、実に力強い。

そして大きな特徴は、燃費向上のためにアクセルオフ時にエンジンとモーター間のクラッチが切れると同時にエンジンがストップ、惰性で走っていく「セーリングモード」を備えることだ。

アウトバーンでの走行時には、巡航状態に入り、下り坂などでアクセルオフにすると瞬時にクラッチが切れてエンジンストップ。転がり抵抗は小さく、平坦路では少しずつ速度が落ちていくが、惰性で走り続ける。このモードは、最高で156km/hまで動作する設定となっている。

速度を回復させるためにアクセルペダルを踏めば、瞬時にエンジンが始動してクラッチがつながり、加速できる。この接続時の挙動は、高速時はほぼスムーズだった。

ATにはオイル循環用の電動オイルポンプも備えるので、エンジンオフ時でもATの作動に問題はない。またパワーステアリングも電動油圧式なので、セーリング状態でもアシストが効く。

ただし、ハイブリッドに標準装備となる、速度によってアシスト量を変化させるサーボトロニック機構は、そのアシストの仕方にやや不自然な印象を受けた。通常の油圧式パワーステアリングを備えるSやターボにも、これらではオプション設定となるサーボトロニックが装備されていたが、それはごく自然な操舵フィーリングだった。

圧倒的な加速力を備えるカイエンターボ

カイエンターボは、まさに最強モデルらしく圧倒的な加速力を備えていた。最大パワー/トルクともにこれまでのターボとスペック上の値は変わらないが、8速AT化も含めて燃費性能は従来型比で23%もの向上が実現されているという。

画像: 911を想わせる5連メーター、そしてパナメーラとの共通性を意識させるセンターコンソールまわりのデザイン。

911を想わせる5連メーター、そしてパナメーラとの共通性を意識させるセンターコンソールまわりのデザイン。

一般道の試乗では、20インチホイールを装着するエンジニアお勧めのモデルを選んだ。なるほど、一般道での乗り味としてはこちらの方がスムーズで走らせやすい。乗り心地も快適である。ターボはエアサスペンションとPASMが標準装備となるが、その設定はノーマルがもっともバランス良く感じられた。

カタログ値では0→100km/h加速が4.7秒、最高速度278km/hを誇るが、さすがに速度無制限区間のアウトバーンといえども、交通量の多い金曜午後の状況下でそれを確認することはできなかった。

それでも、前方が空いた状況で少し踏み込んでいくと、速度計はアッという間に240km/hオーバーの値を示していた。またカイエンS/カイエンSハイブリッドでも同様の機会に試してみたところ、ともにやすやすと220〜230km/hでの巡航を実現してみせてくれた。

今回ハンドルを握ることのできた3モデルの中では、カイエンSのシャープなドライビング感覚が最もポルシェ的な存在だと思えた。また燃費面では、渋滞に遭遇するなどはあまり好条件ではなかったが、各モデルとも平均して7〜8km/L前後という値を示していた。

日本への導入は、まずカイエンターボとカイエンSからで、今年の夏過ぎ頃から上陸する予定だという。なおカイエンSハイブリッドと、今回用意されていなかった3.6L V6エンジン搭載のカイエンは、それより遅れての導入となる。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁)

ポルシェ カイエンS 主要諸元

●全長×全幅×全高:4846×1939×1705mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2140kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4806cc
●最高出力:294kW(400ps)/6500rpm
●最大トルク:500Nm/3500-5300pm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:258km/h
●0→100km/h加速:5.9秒
※EU準拠 

ポルシェ カイエンS ハイブリッド 主要諸元

●全長×全幅×全高:4846×1939×1705mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2315kg
●エンジン:V8DOHCスーパーチャージャー+モーター
●排気量:2995cc
●エンジン最高出力:245kW(330ps)/5500rpm
●エンジン最大トルク:440Nm/3000-5250rpm
●モーター最高出力:34kW(47ps)/1150rpm
●モーター最大トルク:300Nm/1150rpm
●システム最高出力:279kW(380ps)/5500rpm
●システム最大トルク:580Nm/1000pm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:242km/h
●0→100km/h加速:6.5秒
※EU準拠 

ポルシェ カイエンターボ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4846×1939×1702mm
●ホイールベース:2895mm
●車両重量:2245kg
●エンジン:V8DOHCツインターボ
●排気量:4806cc
●最高出力:368kW(500ps)/6000rpm
●最大トルク:700Nm/2250-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●最高速:278km/h
●0→100km/h加速:4.7秒
※EU準拠 

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