2024年6月14日、経済産業省は社会基盤へのデジタル実装を実現するための「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針」を表明。その一環として、2024年度中に、新東名高速道路の一部区間等で、深夜時間帯における自動運転車用レーンを設置する構想を明らかにした。官民による集中的かつ大規模な投資を行うことで「デジタルとリアルが融合した地域生活圏の形成」を目指すという。自動運転トラックの運用実験の開始など、すべての動きは加速しつつあるようだ。

2025年度までには全国50カ所でのサービス提供を目指す

このフィジカルインターネットに関するロードマップは、2040年までの実現を目指している。それに向けた取り組みの先駆けとして2024年度からの実装に向けた支援策「アーリーハーベストプロジェクト」として掲げられた目標のひとつが、「自動運転支援道の設定」だ。

画像: 資料においては、ハード・ソフト・ルールの面から自動運転車の走行を支援している道を「自動運転支援道/レーン」と定義する。ただし、 時期や実情によって全てが横並びに揃わない場合も、同様の呼び方を継続する。またその中でも、専用又は優先化をする場合には「自動運転車用道/レーン」と呼ぶことになる。(経済産業省好評の資料「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針について」より抜粋)

資料においては、ハード・ソフト・ルールの面から自動運転車の走行を支援している道を「自動運転支援道/レーン」と定義する。ただし、 時期や実情によって全てが横並びに揃わない場合も、同様の呼び方を継続する。またその中でも、専用又は優先化をする場合には「自動運転車用道/レーン」と呼ぶことになる。(経済産業省好評の資料「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針について」より抜粋)

具体的な検討計画としては2024年度に、新東名高速道路 駿河湾沼津ICから浜松IC間の約100km(以上)の区間などにおいて、深夜時間帯に自動運転トラックが運行できる専用レーンを設定する。路側センサーなどの道路インフラで検知した道路状況を車両に提供することで、自動運転を支援するという。

さらに、2025年度までには全国50箇所、2027年度までに全国100箇所で自動運転車による移動サービス提供が実施できるようにすることを目指している。こうした取り組みは安全かつ高速で運用できる自動運転車(トラック)によって、人手不足による物流が滞りかねない状況の到来が危惧されている「物流2024年問題」の解決の一助にもなりうるのかもしれない。

ちなみに、道路インフラ面からの高速道路の自動運転時代に向けた実証実験は、2023年度から始められているようだ。2022年10月にNEXCO中日本が公表したニュースリリースによれば、新東名高速道路の建設中区間において、路車間通信技術などを用いた運転支援の高度化、新規サービス創出の可能性検証などが進められている。

実験内容としては以下の9つのケースが想定されている。

1:路上障害情報の後続車への提供
2:路面状況や走行環境に応じた最適な速度情報等の提供
3:車載センサ等を活用した維持管理情報や運行支援情報等の収集・提供
4:コネクテッド車の緊急停止時における遠隔監視、操作
5:交通状況に応じた情報提供による高速道路ネットワークの最適化
6:交通状況に応じた車群制御情報の提供による交通容量の最大活用
7:目的地別の追随走行支援
8:風除け走行先行車適正診断
9:休憩施設内オンデマンド自動運転サービスを想定した駐車スペースの利用効率向上

画像: Hondaの研究開発子会社である株式会社本田技術研究所は2023年3月から、ソフトバンク株式会社と連携し、「高速道路の自動運転時代に向けた路車協調実証実験」に参画。非コネクテッド車両も含む交通インフラからの情報の活用や、二輪車と四輪車が通信でつながることで、事故が起きる手前でリスクを予兆・回避するなど、より安全で安心して移動できる社会の実現に向けたユースケースの検証を行っている。

Hondaの研究開発子会社である株式会社本田技術研究所は2023年3月から、ソフトバンク株式会社と連携し、「高速道路の自動運転時代に向けた路車協調実証実験」に参画。非コネクテッド車両も含む交通インフラからの情報の活用や、二輪車と四輪車が通信でつながることで、事故が起きる手前でリスクを予兆・回避するなど、より安全で安心して移動できる社会の実現に向けたユースケースの検証を行っている。

自動運転トラックの走行テストは順調に進行中。早期での商業化も視野に

現状、公表された経済産業省の「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針」は、あくまでも検討方針。だが政府の取り組みに具体的なビジネスチャンスを見据えた企業体の動きも、すでに始まっている。

画像: 東名高速道路の東京・名古屋間で行われている、「自動運転トラック走行実証実験」の様子。TuSimple JAPAN独自の自動運転システムと日本製トラックとの適合作業を行い、シミュレーター検証、専用テストフィールド検証、シャドーモード検証といった検証作業を終えた段階で2023年から実証実験が始まった。2024年からは、完全無人自動運転トラックの走行実証実験に向けた準備に着手する予定だという。(©tusimple japan)

東名高速道路の東京・名古屋間で行われている、「自動運転トラック走行実証実験」の様子。TuSimple JAPAN独自の自動運転システムと日本製トラックとの適合作業を行い、シミュレーター検証、専用テストフィールド検証、シャドーモード検証といった検証作業を終えた段階で2023年から実証実験が始まった。2024年からは、完全無人自動運転トラックの走行実証実験に向けた準備に着手する予定だという。(©tusimple japan)

カリフォルニア州サンディエゴに本拠を置く自動運転トラック技術企業「 TuSimpleHoldings, Inc.」は、日本支社である「株式会社TuSimple JAPAN(本社:東京都中央区 代表:Nan Wu 以下)」は2023年6月、 日本市場における本格参入を発表した。

同社は既に2023年1月から、東名高速道路おいて自動運転トラックの走行テストを開始している。米国では2021年に自動運転トラックとしては世界で初めて、完全無人走行テストに成功しており、自動運転トラックを用いた物流サービスそのものも、提供している。日本においても、幹線物流における自動運転トラックを利用する取り組みの商業化を目指してる。

「デジタルライフライン全国総合整備計画の検討方針」においては、ほかの「ハーベスト」も含めて、デジタルライフライン計画は約10カ年での実現が目標として設定されている。さまざまなイノベーションを点(狭いエリア)のみならず、それをつなぐ線と、その集合体である面で社会実装することは、単に「生活を便利にする」ことだけを目指したものではない。

その活用エリアが順調に広がることで、自動運転などの恩恵を最大限に活用できるようになり、働き手の生産性向上にもつながると、文書は謳う。新たなデジタル産業が興り、普及が進むことで、さまざまなイノベーションは賃金の向上など所得拡大の好循環にもつながる可能性があるという。

もちろん、ひと口に「インフラを整備する」と言っても、その道のりは決して平たんなものではない。3タイプのインフラ(ハード:高速通信網、IoT機器等/ソフト:データ連携基盤、3D地図等/ルール:認定制度、アジャイルガバナンス等)を整備するにも、それなりに時間がかかることは間違いない。

それでも人間がさまざまな社会課題を解決するためには、もはや「デジタル」を効率的かつ有効に使いこなすことが必須となっている。「官民での集中的かつ大規模な投資」という表現にはまさに、政府としての不退転の決意と待ったなしの事態に対する追い詰められ感などが、複雑に交錯しているように思える。

画像: 東名高速道路における自動運転トラックの実証実験(©tusimple japan) youtu.be

東名高速道路における自動運転トラックの実証実験(©tusimple japan)

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