エキゾチックなたたずまいのフルサイズSUV
英国のスポーツカーブランド、ロータスは今や中国の吉利(ジーリー)ホールディングが筆頭株主となる国際企業で、潤沢な資金を得てフル電動スポーツカー「エヴァイヤ」、「エミーラ」と次々に発表してきた。そしてこの流れに乗って開発が進められてきたのが電動SUV「エレトレ」である。
ロータスの伝統に従ってEで始まる車名の「エレトレ」とは、ハンガリー語で「eletre(生き返る)」という意味らしい。すなわち同社が先に発表したエヴァイヤに続く初の高性能SUV+BEVによって新時代が始まることを意味しているのだろう。
そんなエレトレの試乗会が中国の武漢にある吉利の工場に隣接されたテストコースで開催された。全長5.1m、全幅2.0m、全高1.63mとフルサイズを与えられたエレトレのエクステリアデザインは、大きな抑揚を持ったエキゾチックSUVのたたずまいを見せている。
24個のLEDが並ぶヘッドライト、フロントのダミーグリルには空力特性を考えたいくつものインテークがあり、上部左右から入ったエアはボンネットの上へ抜けてフロントウインドウ、ルーフ後端の二分割エアスプリッターフィンへと導かれる。またリアエンドには前述のルーフフィンの他にリアゲートにはエアスプリッターを持ったリトラクタブルスポイラーも組み込まれている。
高い天井と広々としたキャビンに入ると、ドライバーの正面には2インチ弱の細長いデジタルパネル、そして中央に15.1インチのタッチパネル、そして助手席の前にもドライバーと同じモニターが用意されている。
エレトレシリーズには、ベースモデルに加えて「S」と「R」の3種類のモデルが用意されている。ベースとSは前後に2基のモーターを搭載し、システム総合出力は450kW(603㎰ )、最大トルク710Nmを発生、0→100km /hを4.5秒でこなし、最高速度は250km /hに達する。一方、Rは675kW(905㎰ )と985Nmを発生、、0→100km /hは2.95秒、最高速度は260km /hが約束されている。
搭載される電池は、107kWhのネット容量を持ち、航続距離は条件と仕様によって500~600km 、さらに800VのアーキテクチャーによってCCS急速(350kW)充電では分で約400km分の充電スポーどを発揮する。
ロータスチューンによるスポーティなハンドリング
試乗車は量産プロトタイプで、本来はR専用のロータスインテリジェントアンチロールコントロールや4WSを搭載している。装備されているタイヤもオプションの22インチ、ピレリPゼロである。
ドライブセレクターをDにセットしてスタート、軽めのアクセルペダルを少し踏み込んだだけで通常のBEVを超える加速感が襲ってくる。約2kmの直線コースはあっという間に終わり、強力で安定したブレーキフィールを感じながら折り返しコーナーに入る。
ロールスタビライザーとブレーキ介入のトルクベクタリング、さらに4WSなど先進電子制御のロータス製ハンドリングサポートデバイスは、効果的にスポーツドライビングを楽しませてくれる。
とくにスラロームコースでは、これが3mのホイールベースを持った2.7トンのSUVかと疑うほどの軽快な動きを見せた。スポーティハンドリングをチューンさせたら右に出るものはいないと言われるロータスシャシ開発チームの真骨頂を実感することができた。
エレトレは、武漢工場から28年までに9万台がラインオフされる計画で、早ければ年内にも欧州や北米など世界市場に向けて出荷される。ドイツでの価格はすでに発表されておりベースモデルが9万5990ユーロ(約1425万7000円)、Sは12万990ユーロ(約1797万1000円)、トップモデルのRは15万990ユーロ(約2242万7000円)と発表されているが、現時点での日本発売の可能性は未定である。(文:トーマス・ガイガー<キムラ・オフィス>/写真:キムラ・オフィス)
ロータス エレトレ S主要諸元
●全長×全幅×全高:5103×2135×1630mm
●ホイールベース:3019mm
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:450kW(603ps)
●モーター最大トルク:710Nm
●バッテリー総電力量:112kWh
●一充電航続距離:600km
●駆動方式:4WD