2010年5月、シトロエンC3がフルモデルチェンジされ2代目となって登場した。ほぼ同時期にフォルクスワーゲン ポロも5代目に進化、強力なライバルがひしめくBセグメントにあって、C3はどんな価値を提案していたのか。ここでは上陸に合わせて行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年7月号より)

これまでに類を見ない新しいドライビングプレジャーを提案

用意されるふたつのグレードの違いは内外装の装備だけで、最高出力120psの1.6L自然吸気エンジン+4速ATというパワートレーンはいずれにも共通。正直、あまり期待は抱いていなかったのだが、実際に乗ってみると、この部分も確実に洗練されていた。

画像: DS3とはまったく異なるコンセプトのクルマだが、内容を充実させながらコストを抑えるため、シャシやインパネの基本デザインなどは共通。素材やカラーリングなど、細部の意匠を独自のものとしてC3らしい世界を展開している。

DS3とはまったく異なるコンセプトのクルマだが、内容を充実させながらコストを抑えるため、シャシやインパネの基本デザインなどは共通。素材やカラーリングなど、細部の意匠を独自のものとしてC3らしい世界を展開している。

とくにATは、変速ロジックもシフト時のショックもようやく違和感がほぼ解消された。実用域のトルクが充実したエンジン特性も相まって、急な上り坂以外では、ほぼストレスを感じないで済むようになったのである。

ただし、ポロ1.2TSIが10・15モードで20.0km/Lをマークしている中で、12.3km/Lという燃費は今のコンパクトカーとしては物足りない。この辺りはやはり4速ATの限界を感じるところだ。

この4速ATのおかげで、DS3と同様の静粛性の高さも如実に体感できた。雨が幸いして、静音化されたというワイパーモーターの音も確認できたが、確かにC3の後ではフォルクスワーゲン ポロのそれがうるさく感じられて仕方なかったほどだ。

そしてC3のもうひとつの大きなセールスポイントと言えるのが望外な乗り心地の良さである。しなやかなストロークで穏やかに路面のうねりをいなしていく乗り心地は、シトロエンあるいはフランス車への期待に十分応えるもの。これだけで買う動機に十分なり得そうだ。そして実はハンドリングも、もちろん限界は低いとは言え、動きはDS3より素直でコントローラブルに思えた。

新しいC3の内容は、このセグメントのコンパクトカーとしては非常に充実している。とくにその個性は強い武器となるだろう。あるいは、昨今の経済危機による環境変化の影響を受けていないのだろうか。そんなことを思うのは、C3がベーシックなコンパクトカーとは思えぬほど凝っていて、それ故にDS3との差異が価格も含めてわかりにくいと感じるからだ。

とは言え、シトロエンに対する期待に、これまで以上にしっかり応えるクルマであることは間違いない。こういう選択もアリだという方が世の中は面白いに決まっている。(文:島下泰久/写真:永元秀和)

シトロエン C3 主要諸元

●全長×全幅×全高:3955×1730×1530mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1190kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:88kW(120ps)/6000rpm
●最大トルク:160Nm(16.3kgm)/4250rpm
●トランスミッション:4速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:209万円(2010年当時)

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