共同開発の「ブリヂストン デューラーAT002」が頼もしい
ステラートとはイタリア語でグラベルを意味する。世界でたった1499台の限定車として登場したランボルギーニ ウラカン ステラートは、まさにその名のとおりオンロードに加えてオフロードまで守備範囲を広げて、全天候型スーパースポーツを謳う。
ウラカンの楔形のボディは車高44mmが上げられ、フロント、サイドの下まわり、リアのディフューザー周辺には樹脂製のプロテクターが装着される。フェンダーには、樹脂製のクラッディングを追加することで前30mm、後35mmワイド化。そして、そこには前235/40R19、後285/40R19という外径の大きなブリヂストン デューラーAT002が収められている。
いかにも走破性の高そうなゴツいブロックを持つこのタイヤは、ランボルギーニとの共同開発で、オフロードでの走破性だけでなくオンロードでのパフォーマンスも追求したもの。しかもランフラット構造とされたものである。
エクステリアはノーズの先端には補助灯が追加され、ルーフレールも装着。エンジンカバーからはシュノーケル状のエアインテークが顔を覗かせている。本来のサイドインテークでは、ダート走行時に埃や砂が入り込んでしまうため、お馴染み5.2L V10自然吸気エンジンは吸気系が丸ごと新設計されているのだ。
全天候型スーパースポーツを標榜するだけに、試乗に供されたクローズドコースは半分が舗装、半分がグラベルという特殊なレイアウトとされていた。まず舗装路で印象的だったのは、そのコントロール性の高さ。サスペンションは車高が上がったこともありストローク感があって姿勢変化がわかりやすく、タイヤもヨレなくスライドコントロールがしやすい。
性能のピーク値を追わず、コントロール性を重視
絶対的なグリップはやや控えめだが、それも御しやすさに効いていて、3速全開でのドリフトも余裕で楽しめる。これは痛快だ。
グラベルでは、走行モード選択機能のANIMAに追加されたRALLYモードで。トラクションを最大化するこのモードに入れておけば、むしろアクセルペダルを踏むほどに安定してくるから、右に左に自在にスライドさせながら走らせることができた。それも不安感など皆無に、である。
最近のスーパースポーツカーは性能レベルがきわめて高く、一般道ではおろかサーキットでだって容易に全開にできない感は否めない。しかしながらこのウラカンステラートは、性能のピーク値を追うのではなく、コントロール性に重きを置いた調律とすることで、オンロードでもオフロードでも、V10エンジンを思い切り踏み抜き、歌わせる歓びに存分に浸らせてくれた。
案外、スーパースポーツカーの未来にはこんな手もあるのかも。そう思わせた、実に興味深い1台だったのである。ランボルギーニ自身も手応えを得ているようだから、今回は台数限定だったが、あるいは次の展開も期待してもいいかもしれない。(文:島下泰久/写真:アウトモビリ ランボルギーニ S.p.A.)
ランボルギーニ ウラカン ステラート主要諸元
●全長×全幅×全高:4525×1956×1248mm
●ホイールベース:2620mm
●乾燥車両重量:1470kg
●エンジン:V10DOHC
●総排気量:5204cc
●最高出力:449kW(610ps)/8000rpm
●最大トルク:560Nm/6500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・80L
●WLTPモード燃費:6.7km/L
●タイヤサイズ:前235/40R19、後285/40R19