この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを紹介しよう。その第9回目は、戦後の「国民車構想」を受けて昭和35年に三菱が開発した「三菱500だ」。このクルマは三菱ブランド初の独自開発乗用車だったということでも注目された。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

戦後、三菱ブランド初の意欲的乗用車

昭和30(1955)年に流布された「国民車育成要綱案(いわゆる国民車構想)」を受けて開発されたのが、35年4月に発売された三菱500だ。「あなたの夢をかなえる」のキャッチどおり価格は39万円に抑えられたが、三菱ブランド初の独自開発乗用車だったこともあって、欧州の市場調査を通して構想を練り、日本で初めてとなる1/5モデルでの風洞試験でスタイルを決めるなど、技術者の熱意が感じられる意欲作だった。

画像: 空力的に優れたボディを与えられ、エンジンはリアに搭載される。当初の493cc直2の21psというパワーでは非力は否めず、発売翌年に594ccにエンジン排気量を拡大する。

空力的に優れたボディを与えられ、エンジンはリアに搭載される。当初の493cc直2の21psというパワーでは非力は否めず、発売翌年に594ccにエンジン排気量を拡大する。

軽量かつ空力特性に優れたボディの効果で、493ccながら最高速は90km/hを誇った。それでもパワー不足はいかんともしがたく、36年8月に車名は500のまま、エンジンを594ccのNE35A型25psに強化したスーパーデラックスを追加した。

画像: フルモノコックボディ、駆動レイアウトは空冷直2エンジンを横置きにしたRRを採用。軽量化のためにパワートレインはクランクシャフトとトランスミッション、デフをアルミ製ケースに一体化して収めている。

フルモノコックボディ、駆動レイアウトは空冷直2エンジンを横置きにしたRRを採用。軽量化のためにパワートレインはクランクシャフトとトランスミッション、デフをアルミ製ケースに一体化して収めている。

シャシではコーナーを攻めても捩れが出ない高剛性ボディと、500cc級軽量車としては極めて優秀な乗り心地と評された前後トレーリングアームによる4輪独立懸架がポイントだ。とくに変形デュボネ式のフロントサスペンションは三菱独創の機構で、バネ下重量が軽く、車輪の上下動がステアリングにまったく干渉しない点で高い評価を得た。

画像: 国民車育成要綱案(国民車構想)を受けて登場した。その姿勢は「三菱は国家なり」という三菱グループの姿勢を示すものでもあった。

国民車育成要綱案(国民車構想)を受けて登場した。その姿勢は「三菱は国家なり」という三菱グループの姿勢を示すものでもあった。

リアサスはハーフシャフトにスライドスプラインと両端にU字ジョイントを備えたトレーリングアーム式で、キャンバー変化の大きいスイングアクスルを選ばなかったのは三菱エンジニアの見識だったと言える。操舵系はギア比15.5:1のラック&ピニオンをロックtoロック3回転のステアリングで操作するが、RRならではの操舵力の軽さと、アソビのほとんどないレスポンスの良さが持ち味だった。

三菱500主要諸元

●全長×全幅×全高:3140×1390×1380mm
●ホイールベース:2065mm
●重量:490kg
●エンジン型式・種類:NE19A型・直2 OHV
●排気量:493cc
●最高出力:21ps/5000rpm
●最大トルク:3.4kgm/3800rpm
●トランスミッション:3速MT
●タイヤサイズ:5.20-12 2PR
●新車価格:39万円

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