極上の快適性を突き詰めるためにこだわりぬいた「ブレない身体力」
さらに新型アルヴェルがこだわった新たな価値を強く感じられたのが、さまざまなシーンでの「ブレない身体力」だ。「揺れない・・・」とか「ずれない・・・」などと、言い換えてもいい。がっしりとした強靭ボディと、大小さまざまな部分での不快・不要な振動を巧みに制御する技術が、卓越した安定感を生み出している。
まず注目すべきが、優れたボディ剛性の実現だ。環状構造の骨格を採用、超高張力鋼板は使用する部位に合わせて硬度の高さだけでなくプレス加工の種類も熱間・冷間を使い分け、最適化を図っている。床下V字ブレースとの相乗効果で、従来比で約50%の剛性向上が達成されているという。
軽量化に効果的な構造用接着剤の使い方にもひと工夫がある。特性が異なる2種類の接着剤を部位の要件に合わせて使い分けることで、ボディの変形を効果的に抑制することが可能になった。使用量は実に、従来型の約5倍に達するというが、ただ量が多いだけではないところもキモだ。
機能面でも、剛性向上につながるさまざまな技術的新機軸が盛り込まれている。スライドドアの利便性を確保しながら、開閉用モーターの位置を変更することでボディ中央線に近い位置まで上げた。ユニット自体のコンパクト化、軽量化も徹底。ロッカーをシンプルなストレート構造にすることが可能となり、重量的にも剛性的にもバランスのとれた機構を作り上げた。
ブレないボディ構造とともに、新型アルヴェルでは不快な「揺れ」への対策も徹底されている。凝った機構を備えた周波数感応型ショックアブソーバーを採用するとともに、EPSアクチュエーターをよりフロントアクスルに近い位置に配することで、リニアリティを高めた。搭載されるエンジンや駆動方式によって、チューニングはそれぞれ最適化されている。
後席の乗員を酔いにくくするための姿勢制御にも気を配っている。たとえば路面の凹凸に応じて、ハイブリッド車のモーターおよびガソリン車のエンジンが生むトルクをリアルタイムで制御するととともに、サスペンションが車体の縦揺れを抑制する機能まで備えているのだ。
トルク制御という意味では、ハイブリッド車のモーターについて、ゼロ発進加速時の立ち上がりトルクカーブも最適化、急激な加速感を抑えることでパッセンジャーが酔うのを防いでくれるのも重要なポイントだ。
さらに後輪ベンチレーテッドブレーキディスクのサイズアップ(従来の16→17インチ化)も、実は酔いにくい走りを生む秘訣となっているという。フロントブレーキだけでなくリアブレーキにもしっかり制動力を発揮させることで、減速時の姿勢がよりフラットになる。
いわゆる「船が波にあおられる時」のような前後方向のゆらゆらした動きは、視線を不安定にさせてしまうことで、乗り物酔いを助長する。体感的なGと視線移動とのマッチングを高めることで、平衡感覚の違和感を抑えることができるはずだ。
実は、走行中に後席に座る機会を逸してしまったのだが、同乗したカメラマンの評価は非常に高かった。不快な振動も無駄な揺れも最小限で、しかも静粛性が高いという。プロ目線で言うと「並走撮影をするにも最適の1台」だったようだ。
もっとも、カメラマン氏にロケ後の帰路、快適すぎて爆睡されてしまったりすると、運転手としては少々ジェラシーを覚えることは確かだろう。もちろん、それが家族だったり仲間だったりするなら、オーナーとして非常に誇らしい気分が味わることは間違いない。【新型アルファード&ヴェルファイア初試乗②ドライバー編】に続く。(写真:井上雅行)
トヨタ アルファード エグゼクティブラウンジ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4995×1850×1935mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2230kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:2487cc
●最高出力:140kW(190ps)/6000rpm
●最大トルク:236Nm(24.1kgm)/4300−4500rpm
●モーター最高出力:134kW(182ps)
●モーター最大トルク:270Nm(27.5kgm)
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:2WD
●燃料・タンク容量:レギュラー・60L
●WLTCモード燃費:17.5km/L
●タイヤサイズ:225/65R17
●車両価格(税込):850万円