動きで意思疎通ができる、肌馴染みの良いBEV
タイカンGTSのもっともポルシェらしいところは、走りの確度の高さだろう。体躯的に重量配分は50対50に限りなく近づけられる。その上床面を中心に低重心化と高剛性化が果たせると、BEVの長所をダイナミクスの側できっちり利にしている。
エンジンでは叶えられない緻密な駆動制御に加えて、リアアクスルステアによるゲインコントロール、PASM+PDCCスポーツによるボディコントロールと、これらの電子デバイスが見事な連携をみせながら、一糸乱れず路面をきっちりと捉え続け、状況に応じた的確なフィードバックをドライバーにもたらしているあたりは感心するほかない。
一方でBEVの短所といえば重量だが、操作に対する応答の正確性をもって、そのイナーシャをもしっかり御せている気にさせてくれる。どんなに優秀な電子デバイスがあったとしても、最後はドライバーの自制心に委ねられるのがクルマだが、そこに至るまでに双方がどのような信頼関係が築けるかという点においても、動きで意思疎通できるか否かは重要だ。
決して小さく軽くはない車体が、乗るなり小さくなったかのようにすいすいとコーナーを走り込める。タイカンGTSのような肌馴染みの良さは他のBEVでは味わったことがない。パワートレーンが何であれ、その動きでドライバーの信頼に応える、さすがポルシェと膝を打つほかない。(文:渡辺敏史/写真:井上雅行)
ポルシェ タイカンGTS主要諸元
●全長×全幅×全高:4963×1966×1381mm
●ホイールベース:2900mm
●車両重量:2295kg
●モーター:永久磁石流同期電動機
●モーター最高出力:517(380)kW /598(440)ps(ローンチコントロール時)
●モーター最大トルク:850Nm(ローンチコントロール時)
●バッテリー総電力量:93.4kWh
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:前245/45R20、後285/40R20
●車両価格(税込):1841万円