ほかのイタリアンスポーツとMC20チェロの決定的な違い
そんなときはドライビングモードの「スポーツ」を選べば、快適性重視の「GT」よりもサスペンションのストロークが抑制され、さらに精度の高いドライビングを楽しむことができる。
なお、センターコンソール上のドライビングモード切り替えは、MC20チェロの登場に伴って液晶表示機能が付いた新しいダイヤル式に置き換えられ、操作性がより向上した点も特筆しておきたい。
コンバーチブル化に際し、MC20チェロのエクステリアがどれだけ手の込んだモディファイを受けたかは前述のとおりだが、その基本的なスタイリングはプロポーションの美しさを引き立てることを目指し、極力装飾を廃したピュアなデザインとされている。
この飾り気のないデザインで真っ向勝負をしかけてくるあたりに、デザインとテクノロジーの両面で急激な進化を遂げている「マセラティのいま」が明確に表現されているように思う。
形の美しさとともに、内外装に見られる色彩のセンスのよさも現在のマセラティを象徴する重要な要素である。とりわけ試乗車のボディカラーであるアクアマリーナ(MC20チェロ専用色)はしゃれっ気と品のよさが絶妙のバランスで表現されているし、オフホワイトで統一された室内は、場所によってヌバック(バックスキン)とスムースレザーを使い分けるというこだわりよう。
これもまた、人の気持ちを昂ぶらせることに主眼を置いた他のイタリア製スーパースポーツカーと、長い時間をかけてじっくり付き合いたくなるオトナのセンスを持ち合わせたマセラティとの、決定的な違いといえるだろう。(文:大谷達也/写真:井上雅行、佐藤正巳)
マセラティ MC20チェロ プリマセリエ・ローンチ・エディション主要諸元
●全長×全幅×全高:4670×1965×1217mm
●ホイールベース:2700mm
●車両重量:1750kg
●エンジン:V6DOHCツインターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:463kW(630ps)/7500rpm
●最大トルク:730Nm/3000-5500rpm
●トランスミッション:8速ADCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●WLTPモード燃費:8.54km/L
●タイヤサイズ:前245/35R20、後305/30R20
●車両価格(税込):4438万円
【ブランド動向】新型グランドツアラーが登場次世代モデルに移行中
ステランティスの一員になって以降、史上最大規模の大改革を推進中のマセラティ。彼らは2025年までに全モデルを次世代仕様に切り替えるとともに、BEV仕様のフォルゴーレ(イタリア語で「雷光」の意味)を全モデルに投入すると公言している。
そうしたなか、今年もっとも注目されるのが、マセラティの主力製品である新型グラントゥーリズモの国内投入だ。
現代のマセラティは、いずれも1954年に誕生したA6GCSのコンセプトを受け継ぐとされている。純レーシングカーにフェンダーを追加しただけのようなスタイリングのA6GCSは、事実レーシングカー並みのハイパフォーマンスと長距離のクルージングが苦にならない快適性を兼ね備えていた。
こうしたコンセプトを、もっとも忠実に再現しているのがグラントゥーリズモであり、このためブランドの真髄を示す最重要モデルに位置づけられている。
新型グラントゥーリズモは軽金属主体のモノコック構造をベースとする完全な新機種。パワープラントは、彼らの電動化戦略に従いガソリンエンジン仕様とBEV仕様の2タイプが用意される。