2009年に5代目へとフルモデルチェンジされたスバル レガシィシリーズが、2010年5月に年次改良を受けてさらに進化した。この一部改良ではスバルが長年開発してきた予防安全技術「アイサイト」の機能がアップされているが、そのほかにも細かなアップデートが行われた。ここでは一部改良後すぐに行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年8月号より)

価格差約10万円で新型アイサイトを提供するスバルの英断

スバルのロングセラー、レガシィの排気量拡大とボディの大型化は、狙いの北米市場での大ヒットで吉と出た。北米仕様に比べればボディの大型化こそ控えめだったが、2L仕様を廃するなどひとクラス上のクルマを目指した国内仕様も、2009年度の登録車販売実績で8万台(前年比104%)のスバル車のうち、約37%に当たる3万台を記録。前年比136%と、5代目になってもレガシィは名実ともに屋台骨としてスバルを支えている。

その5代目レガシィが、初めての年次改良を受けた。スバル車はモデルライフの中で細かなアップデートを行うのが特徴で、昨年2009年春に試乗した先代(4代目)レガシィも、熟成が進んだしなやかな乗り心地に、モデルチェンジ直前のクルマとは思えない好印象を受けた記憶がある。

ただし、今回の5代目レガシィ初めての改良は、ダイナミクス関連ではなく装備面の充実がポイント。中でも大きな目玉が、先進運転支援システム「新型EyeSight (アイサイト)」搭載モデルの設定だ。

バージョン2へ進化した新型アイサイトは、フロントルーフ前端に設置されたステレオカメラで前方の状況を立体的に認識することで、プリクラッシュブレーキやAT誤発進抑制制御などの衝突回避・衝突被害軽減機能や、車速追従機能付クルーズコントロールなどの運転負荷軽減機能、車間距離、車線逸脱、ふらつきを警告する予防安全機能などを統合制御するもの。とくに新型アイサイトでは、プリクラッシュブレーキで市販車としては世界で初めて30km/h以下での衝突回避を実現させていることがトピックだ。

ダミーの壁を前に体験してみると、5mほど手前から警報→警報ブレーキ制御(軽いブレーキ制御で回避を促す)ときて、衝突直前に「ガツン」と緊急ブレーキ制御がかかる。なるほど、これなら渋滞中のノロノロ運転でつい眠気をもよおして「あわや!」 なんていうよくあるシーンにも十分に対応できそうだ。ステレオカメラは正面だけでなく、斜め前方の対象物も検知可能で、(テストはできなかったが)自転車や歩行者も制御対象として認識するという。

注目したいのが価格で、日常走行域で有効性の高いこのプリクラッシュブレーキに加え、AT誤発進抑制や全車速追従機能付のクルーズコントロール、車線逸脱機能までついたこの新型アイサイト搭載モデルが、同装備の非搭載グレードとの価格差約10万円で設定されている。

この種のプリクラ装備は数十万円支払ってオプション装着というケースが多いため、有効とはわかっていても手を出しづらいのが現状。それをスバルは低価格で提供するとともに、ツーリングワゴン、B4、アウトバックの3つのボディのすべてのグレードに装着モデルを設定した。10年以上にわたって衝突回避技術を熟成させてきたスバルだからこその英断は、高く評価できる。

今回の改良ではこの新型アイサイトの他にも、左右独立調整機能付のフルオートエアコンやパワーシートなどの装備充実が図られており、大柄なボディに似合ったプレミアム感は強豪ぞろいのDセグのライバルたちにもヒケはとらない。

2.5L 4気筒SOHC、2.5L 4気筒DOHCターボ、3.6L 6気筒DOHC(アウトバックのみ)の各ボクサーユニットや、トランスミッション、シャシなどの変更は今回の改良では見送られているが、登場1年を経て、工業製品としての精度が向上している印象。リニアトロニックCVTとの組み合わせで大柄なボディを楽々と動かすSOHCエンジンのトルク感や、シルキースムースなフラット6は相変わらず絶品だ。

3つのボディ全20グレードからオススメを挙げるなら、レガシィの象徴であるツーリングワゴンにアイサイトを搭載した2.5i アイサイト。前述のようにSOHCのNAエンジンでも不足はないし、何よりこの充実装備で289.8万円(エコカー減税にも対応)は魅力。オプションでHDDナビを付けるだけでもう十分だろう。

もちろんレガシィも、今後は時代の要請を受け入れたダウンサイジングや電動化は避けれられない。新世代ボクサーユニットやハイブリット投入の噂もあり、スバルの次なる一手も大いに気になるところだ。(文:Motor Magazine編集部/写真:井上雅行)

画像: ふたつの高性能CCDカメラから得た映像を3D画像処理エンジンが超高速処理。障害物までの距離や位置を素早く判断する。

ふたつの高性能CCDカメラから得た映像を3D画像処理エンジンが超高速処理。障害物までの距離や位置を素早く判断する。

画像: 必要と判断すれば、緊急のブレーキ制御を行う。

必要と判断すれば、緊急のブレーキ制御を行う。

スバル レガシィ ツーリングワゴン 2.5i アイサイト 主要諸元

●全長×全幅×全高:4775×1780×1535mm
●ホイールベース:2750mm 
●車両重量:1520kg
●エンジン:水平対向4SOHC
●排気量:2457cc
●最高出力:125kW(170ps)/5600rpm
●最大トルク:229Nm(23.4kgm)/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●駆動方式:4WD
●車両価格:289万8000円 (2010年当時)

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