パワートレーンは同じでもその味付けは異なる
しかし、何より408と大きく違っているのはシャシである。C5XのPHEVにはアドバンスドコンフォートアクティブサスペンションが標準装備される。これはC5Xが使うダンパー・イン・ダンパーのシステムであるPHC(プログレッシブハイドローリッククッション)に電子制御をプラスしたものである。
とくに低速域での、路面のザラつき、うねりをヌルッとクタッと柔らかく受け止める様は、まさにその真骨頂。速度が高まると相応に減衰が高まってくるが、姿勢変化を抑え込むのではなく、むしろふんわりとノーズを上下に動かしながら、ゆったりと進んでいく。
無論、イメージはかつての「ハイドロ」に違いないが、個人的にはもう少しコシがあった方がいい気もする。これだとちょっと酔いそうというのもあるが、BXオーナーの私としては、昔のハイドロは単に柔らかいだけじゃなかったぞと言いたくもなるのだ。
パワートレーンは408と同じなのに、こちらは快活というより余裕と感じるのが面白い。モーターの豊かなトルクによって、ゆったりとしていながらも力強い走りが楽しめるし、遮音性はこちらも上々。シトロエンは元来、シャシファーストのクルマだけに、それだけでもう十分以上である。
内外装ともに唯一無二。DSの世界観を堪能する
最後はDS4 。他の2台とは趣が異なるが、こちらは528kmドアハッチバックと大径タイヤを履くSUVとの融合であり、またコンパクトとラグジュアリーのフレンチ流の掛け合わせとも表現できる。
何しろこのクルマ、とりわけバックミラーに映る姿がとても印象的である。良い意味でサイズ感が薄く、一瞬、大きなサイズのクルマが迫ってきたのかと思わせるのだ。これはインパクトが大きい。
インテリアもなかなかに荘厳だ。ドアトリムまで回り込んだダッシュボードのデザインは囲まれ感が強いが、まさにそれこそが狙いなのだろう。いちいち凝ったデザインのスイッチ類とも相まって、濃密な空間が描き出されている。
ステアリングホイールは3台の中で唯一(!)、普通に丸く、実はもっともオーソドックス。インフォテインメントシステムも大枠では同じような機能を持つが、DS4 は日本語入力も可能なタッチパッドを備えるのが特徴である。
とくに背中のクッションの肉厚感が心地良いのがフロントシート。リアシートは足元に余裕がなく、寛げる空間とは言い難いが、このクルマは前席2人が主役だろうと考えれば、とくに不満ではない。同様に荷室も、広さの直接比較はできない。これまた電動のリアゲートを開けると開口部段差はやや大きいものの、荷室自体は深くて容量も十分と言っていい。
このクルマも、他の2台とはまた別の凝ったシャシを持つ。上級グレードのリヴォリに備わるのは、電子制御ダンパーに車体前方を監視する赤外線カメラを組み合わせたアクティブスキャンサスペンション。要は路面状況に応じて減衰力を可変させるのである。
他の2台よりホイールベースが短いせいもあってか、そこまでふわふわと柔らかい印象ではない。いや、むしろ硬めと言ってもいいのだが、相対的にダンピングは弱め。動作状況は掴みにくいが、普段は減衰力を高めにしておいて、必要な時だけ緩めるという方向なのかもしれない。
試乗車は1.5L 直列4気筒ディーゼルエンジンを積むBlueHDi。十分なトルクを発生し、8速ATとの好マッチングもあり走りは快活だが、PHEVに乗った後ではさすがに騒音、振動を意識させられるのは事実。クルマのキャラクターには、こちらもPHEVが一番合っていそうだ。