フェラーリには現在、4つのPHEVがある。SF90ストラダーレ、SF90スパイダー、296GTB、そして最新モデルが今回取材した296GTSである。モデル名はフェラーリの車名ルールに則り、 2.9Lの排気量、V型6気筒、それにグラン(G)、ツーリスモ(T)、スパイダー(S)が組み合わされている。(Motor Magazine2023年10月号より)
60年代のフェラーリを思わせる曲線美
296GTSは、スーパースポーツラインにしてオープンエアモータリングを実現するという、今、もっとも多くの人気を集めているだろうフェラーリだ。先に発表されたローマスパイダーはオーセンティックな幌屋根を採用することで、前世代よりも立ち位置の違いを明確にしている。
このクラスで、2つのオープンカーを鮮やかに棲み分け、1000万円余の価格差などものともしないカスタマーが各々を求めるのだから、所有のご縁などないとはいえ、なんともロマンチックな話だと思う。
296GTSのルーフ開閉システムはF8スパイダーなどと同じロジックだ。天板を2分割しながら反転するように後部に格納される、その所要時間は約14秒。約45km/h以下であれば走行中でもスイッチひとつで動作が完了する。
296シリーズのスタイリングは、60年代のフェラーリの曲線美を現代に蘇らせたかのように見える。60年代前半にル・マンで活躍した250LM や330P あたりがイメージの源泉と、フェラーリ自らも言及している。
その要素として重要なのが、フラットなリアデッキと斜めに走るBピラーで構成されるトンネルバックだが、GTSはそのディテールがGTBにもまして明快だ。ちなみに小さなリアウインドウも可動式で、風の入りをコントロールできる。