フェラーリには現在、4つのPHEVがある。SF90ストラダーレ、SF90スパイダー、296GTB、そして最新モデルが今回取材した296GTSである。モデル名はフェラーリの車名ルールに則り、 2.9Lの排気量、V型6気筒、それにグラン(G)、ツーリスモ(T)、スパイダー(S)が組み合わされている。(Motor Magazine2023年10月号より)

見事なパッケージングにより使い勝手も確保されている

今回の試乗車は、サーキットでのスポーツ走行を想定したパッケージオプション「アセットフィオラノ」を装着していた。大胆なカラーリングは60年代を中心に活躍していたイギリスのディーラー系レーシングチームが纏ったそれをイメージしたもので、アセットフィオラノ装着車のみが注文できるオプションペイントだ。

画像: V6ツインターボエンジンは、バンク角が120度と広いためターボを中央に配置でき、コンパクト化を実現した。

V6ツインターボエンジンは、バンク角が120度と広いためターボを中央に配置でき、コンパクト化を実現した。

パワートレーンの仕様はGTBと同じだ。一次振動を相殺する120度バンクの3L V6ユニットはバンク間にツインターボをレイアウトし、単体では663ps/740Nmを発生。このユニットと8速DCTの間に167ps/315Nmのモーターを組み合わせ、クラッチ制御で電動走行/ハイブリッド走行をマネージする。

シート背後に搭載するリチウムイオンバッテリー容量は7.45kWhで、モーターのみで最高速は135km/h、距離にして最長25km程度のBEV走行が可能だ。システム総合出力は830ps、0→100km/h加速は2.9秒、最高速は330km/hとなる。

オープン化による実用性の低下はごく最小限に留められ、開閉機構を収めながらもシート背後には手荷物を置くスペースを有するなど、パッケージは見事だ。その背後にバッテリーを積んだPHEVという296シリーズの側面も、使い勝手が確保されてこそ活きる特徴だ。このあたりの親切さがフェラーリらしい。

アセットフィオラノのサスペンションセットはさすがに全域でスパルタンさを感じさせる。高速巡航やワインディングロードなどで入力が大きくなってくると応答もしなやかになってくるが、タウンスピード+αでは些細なオウトツの乗り越えでも上下動がしっかり伝わってくる設えだ。

それをまったく意に介さない屋根開きボディの剛性はさすがだと思うが、スタンダードサスペンションの懐深さを知るにつけ、アセットフィオラノはスポーツ走行用途という目的意識を持つべき選択といえそうだ。

搭載されるF163BCユニットは、今年のル・マン24時間で総合優勝を果たした499Pのエンジンアーキテクチャーのベースともなったもの。フェラーリの戦略の周到さを垣間見るようだが、回転の伸び感やパワーの乗り、なにより澄んだサウンドはコンパクトな3L V6ツインターボとは思えない質感に満ちている。

とんでもない速さは言うに及ばずだが「エンジン屋のフェラーリ」を再認識させるこのユニットを天井大開放で味わい尽くせるというのが296GTSの魅力だろう。(文:渡辺敏史/写真:永元秀和)

フェラーリ 296GTS アセットフィオラノ主要諸元

●全長×全幅×全高:4565×1958×1191mm
●ホイールベース:2600mm
●車両重量:1540kg
●エンジン:V6DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:2992cc
●最高出力:488kW(663ps)/8000rpm
●最大トルク:740Nm/6250rpm
●モーター最高出力:122kW(167ps)
●モーター最大トルク:315Nm
●トランスミッション:8速DCT
●駆動方式:MR
●燃料・タンク容量:プレミアム・650L
●WLTPモード燃費:15.4km/L
●タイヤサイズ:前245/35R20、後305/30R20
●車両価格(税込):2740万円

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