2009年秋のフランクフルトショーでデビューしたV8ミッドシップモデル「フェラーリ458イタリア」が、2010年春に続々と日本に上陸して大きな話題となったが、Motor Magazine誌もさっそく上陸したてのこのモデルに緊急試乗している。ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年9月号より)

低速域でも感じられる気持ちよさ

V8エンジンを搭載するミッドシップ2シーター、最新フェラーリである458イタリアに試乗することができた。こうしたスーパースポーツに乗る前は、あれこれと想像をするものだが、正直に言ってその想像はことごとくはずれた。あらゆる面で想像をはるかに上回る出来映えだった。

さて、どういう方法でその素晴らしさを説明しようか。まず言えるのは「これは飛ばさなくても楽しいフェラーリ」だということだ。50〜60km/hで一般道をふつうに走っていても、リニアリティが非常に高くて、クルマとの一体感が得られる。そして、非常に運転がしやすい。これにはデュアルクラッチの7速F1ギアボックスが大いに貢献しているわけだが、低速域でもギクシャクすることはまったくない。ギアをAUTOモードにして平らなところをゆっくり走っていると、60km/h巡航を7速、1500rpmでこなしてしまうほどだ。これならば燃費もいいはずだ。

さらに低速域でも感じられる気持ちよさは軽量であることだ。全長は4527mmだが全幅が1937mmもある堂々としたボディにもかかわらず車重は1380kgに過ぎない。しかもトレッド前/後は1672/1606mmもありミッドシップなわけだから、コーナーはクルリと一瞬にして回ってしまうというフィーリングだ。さらに着座位置がF430より前方にあるので、そのコーナリング感覚は、まさにフォーミュラカーと言ったところなのだ。

ステアリングレシオはF430よりも30%ダイレクトにされており、ロックtoロックはわずか2回転、かなりクイックなはずなのだが意外と落ち着いていて、違和感などまったくなくしっくりくる。乗り心地も非常にいいものだ。新開発のサスペンションはフロント/ダブルウイッシュボーン、リア/マルチリンクだが、縦方向のフレキシビリティが増し路面の凹凸を吸収する能力がアップしたそうだが、それがはっきりと感じられる。この乗り心地とデュアルクラッチによる低速度域での扱いやすさがあれば、都市部で乗ってもまったくストレスはたまらない。いままでのV8ミッドシップフェラーリにはなかったことだ。

画像: 3本出しのエグゾーストパイプなど、リアスタイルにはF40を思い起こさせるものがある。

3本出しのエグゾーストパイプなど、リアスタイルにはF40を思い起こさせるものがある。

「遅いフェラーリ」のことばかり話してどうするんだ、と言われそうだ。驚くことに、いや当然のことかも知れないが「速いフェラーリ」も素晴らしいのだ。ちょっとアクセルペダルを踏み込めば、雄叫びを上げ疾走する。その走りのクオリティはあらゆる局面でこれまでのV8フェラーリを確実に上回るものだ。しかし、公道レベルではそれについて詳しく語る材料はとても得られない。サーキットでの試乗記を見ていただくしかないだろう。

フェラーリ458イタリアは、非常に懐が深い。今回、日本で初めてハンドルを握ることができて、そのことがよくわかった。これだけのオールマイティ性を備えているなら、ドイツのハイエンドクーペから乗り換えたとしても、違和感を覚えることはないだろう。ドイツ車党の人が、いきなりフェラーリというのは無理があると思うかも知れない。しかし、458イタリアについては、まったくそんな心配はいらない。新たな顧客を掘り起こすことになるのは確実だ。ちなみに現在、注文すると納車は12カ月後だそうだ。試乗して感動することが偶にあるが、今回はそのひとつだった。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之/写真:永元秀和)

画像: F1マシンとの関係を強調するという方針の下に、主要なコマンドスイッチ類はステアリングホイール上に配置されている。

F1マシンとの関係を強調するという方針の下に、主要なコマンドスイッチ類はステアリングホイール上に配置されている。

フェラーリ458イタリア 主要諸元

●全長×全幅×全高:4527×1937×1213mm
●ホイールベース:2650mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4499cc
●最高出力:425kW(570ps)/9000rpm
●最大トルク:540Nm/6000rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR
●最高速:325km/h
●0→100km/h加速:3.4秒
●100km/h→0:32.5m
※EU準拠

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