BMW XシリーズのX5が2023年4月の大幅改良によって、Mモデルを含めた全ラインナップが電動化された。その中で、もっとも注目したいのが伝統の直6エンジンにPHEVシステムを搭載したxDrive50e(以下、50e)である。試乗を通して感じた、シルキー6の魅力とは何か。それをじっくりと堪能することができた。(Motor Magazine2023年11月号より)

唯一無二のパワートレーンがもたらす極上の走行体験

パワートレーンは、試乗した50eに搭載されるPHEVに大きな変更があった。45eと呼ばれた前期型からトータル出力を94psも向上。これは直6ツインターボエンジンの出力向上に加えて、5.2kWhも増量したリチウムイオンバッテリーの容量拡大が所以である。

画像: LCIモデルは、Xシリーズであることを強調するX字型のリアコンビネーションランプを採用。

LCIモデルは、Xシリーズであることを強調するX字型のリアコンビネーションランプを採用。

このパワー増強によって、どの速度域でも、体感的な力強さが明確に上がった。まずモーター出力が84psもアップしたことで、EV走行の力強さと、伸び感が飛躍的に増した。さらにエンジンが合わさると、その力強さはM モデルさながらだ。

といったように、LCIモデルでは着実な進化を遂げているわけだが、ではこのX5 50eが誘う未体験ゾーンはどこだろうか。

私は昨年、iXに触れた時にBMWの作るBEVの完成度の高さと、その新鮮さに感動を覚えた。圧倒的な静けさ、滑らかさはBEVにしか作り出せない世界だと確信したからである。そしてそれは、BMWが誇るシルキー6さえも、凌駕したと感じたのだった。

けれど、今回の試乗で心変わりした。X5 50eはiXに通ずる感動的なEV走行を実現する上、その先に待つ美しい直6のサウンドと、力の盛り上がりを魅せた。その瞬間、私はその虜になった。

すなわち、シルキー6の魅力とは、その官能性にあった。もちろん絹のような滑らかさは、当然にBMWの直6エンジンの魅力のひとつ。けれど、回転の上昇に合わせてサウンドがハーモニーとなって協和してゆく感覚は、BEVにも他のエンジンにもない、唯一の個性である。

また、X5 50eのエンジンに関してお伝えすると、MパフォーマンスモデルやMモデルの過激といえるサウンドではないところも、美点であると感じた。

ちなみにこのパワートレーンは現状、日本ではこのX5にのみ搭載される。先代7シリーズや前期型X5の直6&PHEVモデルでは、EV走行時のトルク不足を感じる場面もあったが、大幅な出力向上を実現した新型X5 50eは、そのネガが完全に払拭された。 

このモデルが誘う未体験ゾーンとは、唯一無二のパワートレーンがもたらす、完成された電気駆動と感動的なサウンドを持つシルキー6が融合した、まさに夢のような走行体験だった。(文:Motor Magazine編集部 川内優作/写真:井上雅行)

BMW X5 xDrive50e Mスポーツ主要諸元

●全長×全幅×全高:4935×2005×1770mm
●ホイールベース:2975mm
●車両重量:2500kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ+モーター
●総排気量:2997cc
●最高出力:230kW(313ps)/5500rpm
●最大トルク:450Nm/1750-4700rpm
●モーター最高出力:145kW(197ps)/7000rpm
●モーター最大トルク:280Nm/100-5500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム ・69L
●WLTCモード燃費:10.1km/L
●タイヤサイズ:前275/45R20、後305/40R20
●車両価格(税込):1260万円

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