現行モデル発表日:2018年9月5日
車両価格:2093万円
スポーツ志向だが最上級車の品格は健在
最近のアウディは、どちらかといえば地味な内容のマイナーチェンジを施したモデルが少なくない。ところが、実際に試乗してみると、アウディ S8は目覚ましい進化を遂げていた。
エンジンをかけた瞬間からスポーティモデルであることを強く意識させる。エキゾーストノートはA8より明らかに勇ましいのだが、かといってフラッグシップサルーンの品位を汚すほどうるさかったり下品だったりはしない。アイドリング時の鼓動がA8より力強いのもS8の特色だ。
乗り心地はA8よりもソリッド。後席のクッションもA8とは違って前席と変わらない硬さだが、それでもサルーンとして使うことに躊躇を覚えない快適性だ。この辺の二面性というかスポーツサルーンとしての奥深さが、S8のもうひとつの特徴といえる。
しかし、快適性に対するほんのわずかな犠牲が、ワインディング路ではこの上ない喜びをもたらしてくれる。ダイナミックモードではコーナリング中のロールは最小限に留められ、レスポンスのいいハンドリングを味わえる。
そんなときに、腰高感を一切感じさせることなく、むしろコーナリングのたびに車高が沈み込んでいくかのような安定感を示すのがアウディならではの美点。したがって、ある程度までペースを上げたときに「ああ、これ以上は楽しくないだろうな」とサジを投げるのではなく、「もっとコーナリングを楽しみたい」と思わせてくれるのだ。
BMWでたとえるなら、(先代の)M760iよりもアルピナB7に近いといえば、わかっていただけるだろうか。
こうした基本的なキャラクターはA8にも共通するが、ハンドリングのレスポンスは、さすがにS8に一歩及ばない。つまり、快適性を重視するか、コーナリングの喜びを求めるかで、チョイスは分かれるはずだ。
昨今はSUVやミニバンをサルーン代わりに使うケースも少なくないが、やはり本物のセダンには風格と格式の点でかなわない。積極的に走りを楽しめるところも、背が高いモデルには求め得ない魅力である。端正なスタイリングと心地いいスポーツ性を備えたA8とS8には、そうしたラグジュアリーサルーンの本質がギッシリと詰まっているように思う。(文:大谷達也)
アウディ S8 主要諸元
全長:5190mm
全幅:1945mm
全高:1475mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2260kg
エンジン種類:V8DOHCツインターボ+モーター
総排気量:3996cc
最高出力:420kw (571ps)/6000rpm
最大トルク:800Nm (81.6kgm) /2050-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:4WD
サスペンション形式:前後 ダブルウイッシュボーン
タイヤサイズ:265/35R21
乗車定員:5名