世界市場で6万台以上を販売しボルボの主力車種となっているXC60
ボルボのラインナップのなかで、今一番注目されているのはXC60だろう。2009年秋に導入されたばかりであるが、世界的には6万台以上を販売し、ボルボの主力車種となっている。日本での販売台数を見てもT6 SEの599万円だけという価格にもかかわらず、200万円台後半からあるV50や400万円台半ばから用意されてるV70に次ぐ3番目のモデルになっている。
日本で売れるのも当然だろう。ボディサイズを見ても日本の道路環境にはちょうどいい大きさであり、それでいてボルボの最新安全技術が投入され、日本市場に必要な装備も用意されているのだから、受け入れられるのもわかる。
また、例えばナビモニターひとつとってもXC60は日本市場に受け入れられる要素を持っていた。ボルボの唯一の弱点と言ってもいい純正ナビモニターだが、このXC60からインパネの一等地にすっきりと収まっているのだ。
改めてボルボXC60を眺めると、新世代のボルボフェイスを持っていることがわかる。それはボンネットのVシェイプとDNAライトだ。こうしたデザインは新しいC30やC70、そして来年春に日本導入予定のS60などにも採用され、離れた場所からでもひと目でボルボ車だとわかるようになっている。
4WDシステムを持たないが、T5 SEの499万円は大きな魅力
XC60 T5 SEの魅力は、その価格にもある。これまでは約600万円のプライスしか選択の余地のなかったXC60だが、このT5 SEは499万円だ。これならFFでも不満はないだろう。そうそう、XC60 T5 SEは4WDシステムを持たない。ボルボ=4WDというイメージを持つ人も多くいるかもしれないが、XC60 T5 SEは前輪駆動。"4WDは必要じゃない"という人にとって、これはお買い得感がある。
しかし今回試乗したXC60 T5 SEの最大トピックは、ボルボの最新のパワートレーンが搭載されたことである。組み合わされるトランスミッションは、パワーシフトと呼ばれる6速DCTだ。ボルボのT5というと2.5Lの直5ターボというイメージが強く残っているが新世代のT5は2Lの直4直噴ターボエンジンである。
この新しいボルボの高効率エンジンは、静かでとても上品な雰囲気を持っているのだが、右足に力を込めアクセルペダルを踏み込んでいくと、車重が約1.8トンあるボディをグイグイと引っ張っていく"力強さ"という一面も見せてくれる。たしかに、比較すれば、3Lの直6ターボを積むT6より絶対的なパワーはない。しかし、このT5に非力さを感じるかと言えばそうではないのだ。XC60のキャラクターにとても合ったエンジンだと言っていいだろう。
"パワーシフト"も粗さが顔を出すことなく熟成されて、とても滑らかなものに仕上げられていた。トルコン式ATのようなスムーズさと言ってもいい。このあたりの味付けは意図的にされているのだろう。もちろん、このDCTは燃費にも貢献している。ATに比べ約8%の燃費向上ができるという。さらにボルボ初となるブレーキエネルギー回生システムを採用している。
軽快ささえ味わえたこの新しいパワーユニットをかなりアップダウンの激しいワインディングに持ち込むこともできたが、そこでも力不足を感じることはなかった。ただし、鋭角な曲がり角やUターンの時など、もう少し小回りが効いて欲しいと思う人はいるだろう。ちなみに最小回転半径は5.8mとこのクラスの平均的なものだ。また、4WDではないことに不満もなく、このエンジンなら車重が軽いFFの方がいい面を引き出せる組み合わせなのかもしれない。
新しいボルボの"顔とパワートレーン"を持ったXC60 T5 SEは、これからのボルボの牽引車となっていくだろうと確信できた試乗だった。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:島村栄ニ)
ボルボ XC60 T5 SE 主要諸元
●全長×全幅×全高:4625×1890×1715mm
●ホイールベース:2775mm
●車両重量:1790kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1998cc
●最高出力:149kW(203ps)/6000rpm
●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1750-4000rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:FF
●車両価格:499万円(2010年当時)