フロントマスクが従来よりもシャープに生まれ変わった
モデル3に初めて乗ったのは、2020年の4月頃でした。そのときの試乗車は2WDで、試乗初日は雨が降っていました。
1モーターの後輪駆動ならではのフロントの軽さと、力強く瞬発力のあるモーター駆動により後ろから蹴り出されるようなその鋭い加速に感動したことをよく覚えています。濡れた路面でもう少し強く早くアクセルペダルを踏み込めば、ドリフトもできるのではないかと思うほどでした。
先進的かつクリーンで、だけど大人しそうな内外装からは想像できないほど過激な走りもできる、そんな予感がしてドキドキしたのです。
それから約3年半を経た2023年11月、大幅改良を受けた新型モデル3と対面を果たしました。今回の試乗車は「モデル3 ロングレンジ AWD」です。前後輪をそれぞれ1基のモーターで駆動する2モーターの4WDです。なお、基本骨格などは登場時から変更はありませんが、大きなところから細かな部分まで多岐にわたる改良が施されています。
大幅改良を経て、大きく変わったとひと目でわかるのがエクステリアデザインです。以前のヘッドライトは大きめで、その有機的なボディラインも相まっていうなれば愛嬌のある“カエル顔”のフロントマスクでした。
それが新型では一転、上下幅を細くリデザインされたヘッドライトを採用。それに合わせてバンパーの形状も変更されており、シャープな顔つきになりました。
また、フロントマスクがシャープになったことでボディ全体が低くなったように見えました。ですが、実際のカタログ値の全高は改良前と変わっておらず、そう感じたのはデザインの妙の効果と言えるでしょう。
すべてのレバーがなくなったインパネ
試乗車の貸出時に受け取ったキーは薄いカードです。これまでにもあった薄型のカードタイプのスマートキーではなく、サイズも厚さもクレジットカードや交通系ICカードそのもので、ボタンの類いも一切ありません。
財布やカードケースに入れておくこともできて便利だと思う反面、いわゆる昔ながらのキーや今や主流のスマートキーに馴染みがある人、私のようにキーを手にすることで感じる重みや感触にそのクルマを所有していることを噛みしめるような人はちょっと味気なく思うかも知れません。
そのカードキーをBピラーにタッチするとドアの施錠&解錠ができます。鍵を開けてドアに埋め込まれたドアノブの広い部分を押し、せり出したドアノブを引いてドアを開け、車内を覗き込みます。するとこれまでのクルマとは大きく異なる車内空間が広がっていました。
その空間は「半透明なコクーン(繭)」と表現するのがぴったりでしょうか。車内はスモークがかかった全面ガラス張りのルーフをとおして降り注ぐ適度な光で満たされています。
一方、インパネに目をやるとハンドルとディスプレイ以外には何もない! 今回の大幅改良ではインテリアにも手が加えられ、ステアリングコラムに配置されていたシフトセレクターやウインカーレバーといったものが一切取り払われているのです。
まるで何かのSF映画で見たことがある未来のクルマか、はたまた2~3人乗りの小さな宇宙船のコンソールのようです。このデザインは好き嫌いが分かれるところかも知れませんが、新しいモノ好きの私としては心躍るものでした。