より大きく、広いことがアドバンテージだった
初代、二代目とブルーバードの後塵を拝してきたコロナの、起死回生の1台となったのがこの三代目RT40型だ。実質的にトヨタVS日産の勝負を決めた1台とも言えるだろう。ここまではライバルたるブルーバードにコロナは劣勢だった。
しかし、この昭和39(1964)年9月のモデルチェンジでは、排気量を上げパワーアップしたエンジンや、ブルーバードより大きいだけでなく、ボディスタイルの力強さを前面に押し出すことで、車格が上であることを演出することに成功したのだ。
ブルーバードもその後、コロナを上回る販売台数となることもあったが、トヨタは販売力の強さを活かし、昭和40年後半には完全にブルーバードに販売台数で勝るようになる。
快進撃を支えた要因を具体的に見ていこう。主な要因が斬新なスタイリングだった。国産車では例のないクリーンカットと呼ぶスラントノーズを鏃(やじり)に見立て、ボディ側面には的に向かって飛ぶ矢をイメージした「アローライン」を入れて強い疾走感を演出したのだ。
これは、このときからフルサイズのクレイモデルでスタイリングの最終検討ができるようになったのが大きかった。クレイモデルをもとにしてプラスチックのマスターモデルを作り、これを原型として外板形成することで、デザイナーの意図したとおりのスタイルとできたのだ。
ボディサイズ自体もクラス最大で、とくに全幅を60mm広げて安定感を高めると同時に、後席幅をブルーバードより70mmも広い1290mmとするなど居住性を大幅に向上させて好評を得ている。この当時、大きい、広いという事実は大きなアドバンテージとなった。
剛性は(先代比)曲げで3倍、捻りで2倍に高まった
エンジンは1.5Lで先代のR型の改良型とはいえ、高速化に備えてムービングパーツを全面的に新設計した2R型に進化した。これは5500rpmで70psを発生する高性能エンジンとなっていた。
具体的な改良箇所は、ボア径を77mmから78mmに拡大したことで排気量が1453ccから1490ccとなったこと。細かい部分では補機類の材質を変えるなどをして、エンジン重量を従来より5kg軽い150kgとした。さらに吸排気系や主運動部品の改良も加えられていた。
トランスミッションは3速フルシンクロのコラムシフトが標準だったが、輸出用の4速フルシンクロトランスミッションがオプションで加えられている。さらにトヨグライド(2速オートマチック)の改良版も採用され、より広いドライバーのニーズに応えるようにした。
ボディ骨格は先代のユニフレーム(セミモノコック)の進化型だ。旧型では不足していた全体の剛性を考慮しフロントやリアのボディ周りとフロアを一体にとらえ、応力の集中を避けた設計が特徴だ。ピラー類も剛性を上げるために旧型よりも太くされた。剛性は(先代比)曲げで3倍、捻りで2倍に高まった。新機軸としてフロントサイドメンバーエクステンションを設け、室内への振動・騒音の侵入を減少させている。