この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第26回目はスカイライン2000GT。スカイライン伝説はこのクルマから始まった。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)
「羊の皮を被った狼」の伝説を生み出したプリンス最後のスカイライン
高性能スポーツセダンとして認知されたスカイラインは、2代目のS50型である。初代ALSI型は、どちらかというとアメリカン・スタイルを採り入れたボディが印象的で、大型の高級ファミリーカー路線を歩んだが、2代目のプリンス・スカイラインは、一転してオーソドックスなヨーロピアン・ルックを持つオーナーカー&小型ファミリーカーへと転換を図った。
昭和38(1963)年9月に登場したS50型スカイライン1500は、軽量かつ高剛性のモノコックボディを採用し、エンジンも1.5L直列4気筒OHVのG1型だけに絞り込んでいる。1500デラックス(S50D-1)は、激烈な販売競争が始まっていた1.5Lクラスへのプリンスの切札として投入されたモデルで、従来の1900はグロリア・シリーズに移し、1500のみとなった。
リアサスペンションもそれまでのド・ディオンアクスルをやめ、平凡な半楕円リーフリジッド・アクスルとなったが、グリスアップポイントをシールし、3万kmの無給油シャシとするなど、当時としては画期的な試みが盛り込まれていた。
またスポーツキットを設定したことも目新しく、4速フロアシフトを設定、さらに回転計、ノンスリップデフ、リクライニングシートなどが含まれており(価格は18万8000円、本体価格は73万円)、実はこのスポーツオプション設定がスカイラインGT誕生の伏線のひとつだった。
もうひとつの動機は、S50型が登場する4カ月前に開催された昭和38(1963)年5月の第1回日本グランプリでのプリンス・チームの惨敗である。このレースで各メーカーはモーターレーシングが販売に及ぼす影響に一驚したのだ。