この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第27回目は、「ヨタハチ」の愛称で親しまれたトヨタスポーツ800の登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

ポルシェ911に先がけて、着脱可能のFRP製ルーフパネルを採用

トヨタスポーツ800の原型は、昭和37(1962)年の第9回東京モーターショーに、パブリカ・スポーツの名で参考出品されたモデルである。ちなみにこのデザイナーは、ダットサン110/210型のデザインで毎日工業デザイン賞を受けた佐藤章蔵氏と言われている。

画像: タコメーターは5500rpmからレッドゾーンになる。イグニッションはタコメーターの左側、センターコンソール部に配置されているのが特徴だ。純スポーツカー的な作りと言えるだろう。

タコメーターは5500rpmからレッドゾーンになる。イグニッションはタコメーターの左側、センターコンソール部に配置されているのが特徴だ。純スポーツカー的な作りと言えるだろう。

このプロトタイプは第二次大戦中の戦闘機などと同じく、後方にスライドするキャノピー(天蓋)が特徴だったが、生産型では雨天の際の不便さ、乗降の不都合(とくにスカートをはいた女性の)を考慮して通常のドアに改められている。

しかし、きわめて簡素なフロントグリル(開口部にはデフレクター兼ガードが一本だけ)、オーバーライダーだけのバンパー、無駄のない曲面構成のボディなど、デザイナーの主張がそっくり生産型に引きつがれている。

このボディにはふたつの大きな特徴があった。第一はそのサイドウインドウに曲面ガラスを使用したことで、これは前面投影面積の減少に大きく寄与している。第2は、有名なポルシェ911の「タルガ・トップ」にほぼ1年先がけて、着脱可能のFRP製ルーフパネルを採用したことである。

画像: ルーフは幌ではなくデタッチャブル式ハードトップを備える。素材はFRP製となる。アルミのボンネットとともにトヨタS800の生命線である軽量化に貢献している。

ルーフは幌ではなくデタッチャブル式ハードトップを備える。素材はFRP製となる。アルミのボンネットとともにトヨタS800の生命線である軽量化に貢献している。

この航空機を思わせるエアロダイナミック・ボディの設計には、入念な風洞実験が行われ、それにより前面投影面積は1.33m²と、ポルシェ 904の1.32m²とほぼ同一となった。また空気抵抗係数Cd値は0.30をやや上回る優れた数字を示した。

トヨタスポーツ800は、量産車パブリカのコンポーネンツ(構成部品)を多用して安価に作られており、エンジンも当然ながらパブリカの空冷水平対向2気筒OHV(U型)に手を加えた2U型である。ボアは5mm拡大した83mmだが、ストロークは73mmと同一で、排気量は697ccから790ccへと増大している。気化器もベンチュリー径を増大し(26φ→28 φ)、気筒あたり1個ずつ取りつけてあった。

またクランクシャフトまわりも強化され、圧縮比は8.0から9.0へと高められた。4速MTギアボックスを介し0→400mは18.4秒、最高速は155km/hである。これは当時の代表的ライトスポーツカー、オースチン・ヒーレー・スプライトのそれを10km/hオーバーしている。

しかも上手に走らせれば燃費は市街地で18km/ L、郊外のクルージングでは28km/Lと、まさに当時の若者の軽い財布の負担とならぬ数字だった。

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