「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、TRD(現・トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)がチューンしたトヨタ 86だ。

操作に対する反応が優れていて気持ちいい!

画像: 官能性の高いサウンドを奏でながら走り抜ける86 TRD パフォーマンスライン。ブレーキのパフォーマンスも最高だ。

官能性の高いサウンドを奏でながら走り抜ける86 TRD パフォーマンスライン。ブレーキのパフォーマンスも最高だ。

実際に乗ってみると、まず操作に対するボディの反応がとにかく優れている。スロットル&ブレーキ、そしてステアリングの全入力に対してリニアリティが高い。これはボディが優れているだけでなく、吸排気系の変更によりスロットルレスポンスが向上していたり、ブレーキの変更によってペダルのダイレクト感が向上していることもポイントだ。さらにエアロパーツによって高速域の安定感が増したことも見逃せない。

また、音の演出も見事だ。ノーマルではサウンドジェネレーターによって吸気音を心地良く聴かせることに成功しているが、TRDの手がけた86はこれと同様の甲高い周波数のエキゾーストノートを後ろ側から取り込んでいるように感じる。まるでエンジン音が5.1chサラウンドになったかのような感覚。これもまた官能性が高い。

足まわりは、街乗りでは減衰力を緩めていなかったこともあってハーシュネスが強い部分もあったが、スピードレンジを上げるとうまく路面をいなす。ノーマルよりもリアの安定感はかなり高く、スロットルやブレーキによって狙ったラインに瞬時に乗せられる感覚に優れている。注目のブレーキはストッピングパワーもバランスも文句なし。剛性感あふれるタッチと、短すぎず長すぎないストローク感も絶妙でコントロール性は抜群だ。

このように派手さや速さばかりを追求せず、正確性や官能的な世界を追求したことで、TRDは86をまさに真のスポーツカーにしたと感じさせてくれた。価格だけでは片づけることのできない、深みのあるクルマになったと断言できる。

画像: TRDのロゴが入ったシフトノブは写真のAT用だけでなく、MT用も設定。赤いスタート/ストップ スイッチにもTRDのロゴが入る。

TRDのロゴが入ったシフトノブは写真のAT用だけでなく、MT用も設定。赤いスタート/ストップ スイッチにもTRDのロゴが入る。

トヨタ 86 GTリミテッド(ベース車) 主要諸元

●全長×全幅×全高:4240×1775×1300mm
●ホイールベース:2570mm
●車両重量:1230kg
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:1998cc
●最高出力:147kW(200ps)/7000rpm
●最大トルク:205Nm(20.9kgm)/6400-6600rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●JC08モード燃費:12.4km/L
●タイヤサイズ:215/45R17
●当時の車両価格(税込):297万円

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