ハンドリングはちょっと大人の味付け。後輪の締まりが違う
しかし、一般道でのレーンチェンジや緊急回避をイメージさせるスラローム(速度は40km/hほど)を走ると、実は先代のしっかり感よりも、新型のしなやかさの方が「安定した走り」につながっていることを実感させられます。
先代では剛性感を伴って思い切りのいいハンドル操作が楽しめますが、リアタイヤの収束が遅れ気味。コース後半は、クルマの挙動もハンドルの舵角も、無駄な動きが増えていきます。新型はスムーズにリアが追従してくれるので無駄に速度が上がることなく、最後の最後までリズミカルに落ち着いて走り切ることができました。
クローズドコースにおける高速走行時の印象も含めると、GR-XⅢの進化は「もっとストレスフリーになった」という表現が、似合っているように思えます。レーンチェンジ時のダイレクト感は従来型の方が上かもしれませんが、それは同時に緊張感を伴うもの。GR-XⅢの乗り味は、より大人のドライビングスタイルにマッチしている、と言ってもいいかもしれません。
公道でのテストでは、そうしたGR-XⅢならではの「エッジが効いた」洗練感を、よりわかりやすく体感することになりました。一般道レベルの速度域でも、タイヤから発生するさまざまなノイズが抑えられていることがわかります。どちらかと言えば、風切り音の方が気になってくるほど高い静粛性を、実現しています。
乗り味も尖ったところの少ないジェントルなフィールに終始しますが、興味深いのが、装着されている車種それぞれの個性もまた、しっかり洗練されているように思えたことです。
たとえばメルセデス・ベンツEQEやトヨタ プリウスのように、そもそもコンフォートネスを重視している向きでは、路面の凹凸に対する反応はもちろん、ハンドリングについても、よりなめらかさが際立っていました。
一方でBMW i4のようにより積極的にドライビングを楽しみたくなるモデルでは、BMWのフルバッテリーEVらしいドライバビリティがしっかり残されたうえで、より質感の高い挙動を楽しむことができます。
それもそのはず。実はGR-XⅢの開発に当たってブリヂストンは、開発におけるターゲットをさらに広げていことも進化の重要なポイントとしているのだそう。従来は国産車寄りの目線で開発が進められていましたが、欧州車、あるいはBEVなど、より広い視点に立ったターゲッティングに取り組んでいるのでした。
レグノGR-XⅢはエンライトンの採用によって確かに、タイヤ単体としての性能円をより大きく広げることができました。加えて、対応する車種のバリエーションという「世界観」に至るまで、バランスよく広げることに挑戦し、見事に成功しているようです。