「V2Hシステム」とは、EVのバッテリーから家庭に放電できるシステムのこと。
世界初のこのシステムを開発したニチコンから、「V2Hシステム」及び今春に発売される第3世代モデル「EVパワー・ステーション® VSG3シリーズ」について話を伺った。(『Motor Magazine』2024年5月号より)

「EVパワー・ステーション® VSG3シリーズ」の特徴

画像: 第2世代モデルと第3世代モデルの比較図。第3世代モデルは第2世代モデルの重量91kgに比べ、プラグホルダ装着時の合計値が42.7kgと約53.1%も軽量化していることが分かる。

第2世代モデルと第3世代モデルの比較図。第3世代モデルは第2世代モデルの重量91kgに比べ、プラグホルダ装着時の合計値が42.7kgと約53.1%も軽量化していることが分かる。

── 特徴①の「小型・軽量化、セパレート化」について、詳しく教えてください。

ニチコン 現行の第2世代モデルは、パワーユニットとプラグホルダは一体型となっており、重量は91kgありました。イメージで言うとエアコンの室外機くらいのサイズがあり、利用希望者からは「もっとコンパクトなら、うちにも設置できるのに」という声をよく頂きました。そこで大幅な小型・軽量化に挑み、今回の第3世代で実現しました。

さらにパワーユニット(本体)とプラグホルダ(操作部)をセパレート化したことで、駐車場スペースにはプラグホルダだけを設置する、といった柔軟な配置が可能となり、また両方とも壁掛けができるようになって、設置時の自由度と使いやすさが大幅に向上しました。このことにより、物理的に設置できる住まいが格段に増えたかと思います。

画像: 従来は災害などで停電した時に、家庭用とV2H用の分電器の切り替えを行わなければならなかったが、「VSG3シリーズ」では分電器が1つになり、停電になると自動的にクルマから放電される。

従来は災害などで停電した時に、家庭用とV2H用の分電器の切り替えを行わなければならなかったが、「VSG3シリーズ」では分電器が1つになり、停電になると自動的にクルマから放電される。

── 特徴➁の「停電時も自動で家庭に放電可能になった点」について、詳しく教えてください。

ニチコン これまでは法律により、家庭にある一般家庭用分電盤とV2H専用の分電盤は、別々に設置することが必要でした。大きな設置スペースが必要なことに加え、停電などの際にクルマからの放電に切り替えるには、ユーザーによる分電器の切り替え操作が必要でした。しかし、夜間の非常時にそのような操作を行うのは、大変な手間がかかりますし、危険を伴うこともありました。

私たちも経済産業省などに働きかけ、2023年に分電盤の設置の規定について法改正が行われ、2種の分電器を1機に集約することが法的に可能になりました。そこで、新型の小型自動切換開閉器を開発、専用分電盤を小型化して1つの分電盤の中に収められるようにしました。これにより停電が発生しても、”自動的に”EVからの放電に切り替わるようになり、大変便利になりました。

また第2世代と同様、200V・6kVA出力なので、家をまるごとバックアップできます。
条件によりますが、一日に家庭で使用する電力量は10~15kWhと言われていますが、例えば「日産リーフe+」だと60kWhを放電できるので、停電になった場合も単純計算で、約3日過ごせることになり、かなり安心感があると思います。

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