世界を振り向かせた国産&量産スポーツカーの金字塔
フルオープンの2シーター・スポーツとして人気の高かったフェアレディ2000(SR311)がフルモデルチェンジされ、それまでとはまったく異なるクローズドボディのファストバック・スタイルをまとって、フェアレディ Z(S30)として登場したのは昭和44(1969)年10月(発表)のことであった。
ソレックスのツインキャブを装着し「硬派のスポーツ」としてファンの多かったオープンスポーツカー、 SR311の「早すぎた退場」を惜しむ声も少なくなかったが、「生産の85%は輸出された」と言われるフェアレディが、その主要な輸出先、北米市場の好みを取り入れることで「クローズドボディのフェアレディが誕生した」と言われれば、それは時代の流れだったということだろう。
フェアレディZの国内市販用モデルはZとZ-L、 Z432の3モデルでスタートしているが、このうちZとZ-Lには直列6気筒SOHCの1998cc、ツインキャブで130psのL20型エンジンが搭載されていた。このL20型ツインキャブはセドリックでもおなじみのエンジンであった。
一方、最速モデルのZ432は直列6気筒DOHC24バルブ、1989ccのS20型を搭載。最高出力160ps/7000rpm、最大トルク18.0kgm/5600rpm(ハイオク仕様)を発生した。
S20型は昭和44(1969)年2月に登場して注目を集めたスカイライン2000GT-Rでデビューしたエンジンで、日本GPなどレースで活躍したレーシング・プロト、R380のGR8型のノウハウを詰め込んで生産型としたエンジンと言われていた。「432」というネーミングは、このS20型の「4バルブ・3キャブレター・2カムシャフト」からの命名であった。
サスペンションは前後ともストラットの4輪独立懸架で、ハードな走りに備え、硬めのセッティングとなっていた。ブレーキはフロントにガーリング型ディスク、リアはLT式ドラムを採用。ギアボックスはベーシックモデルのZは4速MTだったが、上級グレードのZ-Lと432にはGT-Rと同じポルシェタイプの5速MTを採用した。
最高速は210km/h、0→400m加速は15.8秒と「シリーズ最速モデル」の名に恥じなかった。ちなみにL20型ツインキャブ、130psを搭載したZの最高速は185km/h、5速MTのZ-Lは195km/hである。
Z432は昭和45(1970)年1月からレースに参戦、4月のレース・ド・ニッポン6時間レースや昭和46 (1971)年4月の富士300kmなどで優勝を飾っている。とくにレース・ド・ニッポンでは同じS20型エンジンを搭載したスカイラインGT-Rと対決して勝利をあげている。
これらのレース出場用として、ラジオやヒーターも外して内装を簡素化、FRP製のボンネットフードやリアスポイラー、アクリル製のリア/サイドウインドウなどを採用することでZ432から80kg車重を軽減し、ガソリンタンクを100L(スペアタイヤは収まらないのでラゲッジフロアに配置)としたレーシング仕様のZ432Rも追加発売されている。
もっとも、レースシーンではトラブルも少なくなかったと言われ、排気量が多い240Zのほうがトルクフルかつ扱いやすさもあって、昭和46年後半あたりからレースの主役は240Zにとって代わられている。そして昭和48(1973)年9月、「排出ガス規制対策」を理由に、Z432の生産は打ち切られた。累計生産台数は約4年間で419台とごく少数であった。
日本はもとより海外でも大ヒットを飛ばした初代Zは、昭和45(1970)年10月にレギュラーガソリン仕様と3速AT車(Z-L)を仲間に加えている。さらに翌年10月には海外仕様と同じL24型SOHCエンジンを積む240Zシリーズを国内市場にも投入。この240Zについてはこの後紹介しよう。´
日産フェアレディZ-L(S30型)諸元
●全長×全幅×全高:4115×1630×1285mm
●ホイールベース:2305mm
●車両重量:995kg
●エンジン型式・種類:L20型・直6DOHC
●排気量:1998cc
●最高出力:130ps/6000rpm
●最大トルク:17.5kgm/4400rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:6.45H-14 4PR
●新車価格:108万円
日産フェアレディZ432(S30型)諸元
●全長×全幅×全高:4115×1630×1290mm
●ホイールベース:2305mm
●車両重量:1040kg
●エンジン型式・種類:S20型・直6DOHC
●排気量:1989cc
●最高出力:160ps/7000rpm
●最大トルク:18.0kgm/5600rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:6.95H-14 4PR
●新車価格:185万円