この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第54回目は、日本を代表するスポーツカー日産フェアレディZの初代の登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

世界を振り向かせた国産&量産スポーツカーの金字塔

フルオープンの2シーター・スポーツとして人気の高かったフェアレディ2000(SR311)がフルモデルチェンジされ、それまでとはまったく異なるクローズドボディのファストバック・スタイルをまとって、フェアレディ Z(S30)として登場したのは昭和44(1969)年10月(発表)のことであった。

画像: 1969年10月、 第16回 東京モーターショーでお披露目されたZ432。専用の純正マグネシウムホイールを装着。 最高速度210km/hとベーシックモデルの約2倍になる185万円(マグネシウムホイール仕様)という価格も衝撃を与えた。

1969年10月、 第16回 東京モーターショーでお披露目されたZ432。専用の純正マグネシウムホイールを装着。 最高速度210km/hとベーシックモデルの約2倍になる185万円(マグネシウムホイール仕様)という価格も衝撃を与えた。

ソレックスのツインキャブを装着し「硬派のスポーツ」としてファンの多かったオープンスポーツカー、 SR311の「早すぎた退場」を惜しむ声も少なくなかったが、「生産の85%は輸出された」と言われるフェアレディが、その主要な輸出先、北米市場の好みを取り入れることで「クローズドボディのフェアレディが誕生した」と言われれば、それは時代の流れだったということだろう。

フェアレディZの国内市販用モデルはZとZ-L、 Z432の3モデルでスタートしているが、このうちZとZ-Lには直列6気筒SOHCの1998cc、ツインキャブで130psのL20型エンジンが搭載されていた。このL20型ツインキャブはセドリックでもおなじみのエンジンであった。

一方、最速モデルのZ432は直列6気筒DOHC24バルブ、1989ccのS20型を搭載。最高出力160ps/7000rpm、最大トルク18.0kgm/5600rpm(ハイオク仕様)を発生した。

S20型は昭和44(1969)年2月に登場して注目を集めたスカイライン2000GT-Rでデビューしたエンジンで、日本GPなどレースで活躍したレーシング・プロト、R380のGR8型のノウハウを詰め込んで生産型としたエンジンと言われていた。「432」というネーミングは、このS20型の「4バルブ・3キャブレター・2カムシャフト」からの命名であった。

画像: 「432」は「4バルブ・3キャブ・2カムシャフト」を意味するS20型を搭載。Z432R(タイトル写真)はレース使用が前提なのでエアクリーナーが外され、ファンネルが剥き出しとなる。スペックはZ432と同じ。

「432」は「4バルブ・3キャブ・2カムシャフト」を意味するS20型を搭載。Z432R(タイトル写真)はレース使用が前提なのでエアクリーナーが外され、ファンネルが剥き出しとなる。スペックはZ432と同じ。

サスペンションは前後ともストラットの4輪独立懸架で、ハードな走りに備え、硬めのセッティングとなっていた。ブレーキはフロントにガーリング型ディスク、リアはLT式ドラムを採用。ギアボックスはベーシックモデルのZは4速MTだったが、上級グレードのZ-Lと432にはGT-Rと同じポルシェタイプの5速MTを採用した。

最高速は210km/h、0→400m加速は15.8秒と「シリーズ最速モデル」の名に恥じなかった。ちなみにL20型ツインキャブ、130psを搭載したZの最高速は185km/h、5速MTのZ-Lは195km/hである。

Z432は昭和45(1970)年1月からレースに参戦、4月のレース・ド・ニッポン6時間レースや昭和46 (1971)年4月の富士300kmなどで優勝を飾っている。とくにレース・ド・ニッポンでは同じS20型エンジンを搭載したスカイラインGT-Rと対決して勝利をあげている。

これらのレース出場用として、ラジオやヒーターも外して内装を簡素化、FRP製のボンネットフードやリアスポイラー、アクリル製のリア/サイドウインドウなどを採用することでZ432から80kg車重を軽減し、ガソリンタンクを100L(スペアタイヤは収まらないのでラゲッジフロアに配置)としたレーシング仕様のZ432Rも追加発売されている。

もっとも、レースシーンではトラブルも少なくなかったと言われ、排気量が多い240Zのほうがトルクフルかつ扱いやすさもあって、昭和46年後半あたりからレースの主役は240Zにとって代わられている。そして昭和48(1973)年9月、「排出ガス規制対策」を理由に、Z432の生産は打ち切られた。累計生産台数は約4年間で419台とごく少数であった。

画像: Z432Rのインパネ。Z432からラジオやヒーターを取り外し、ルーフライトや助手席のサンバイザー、グローブボックスの蓋の省略など、徹底した軽量化が施された。なお、ステアリングはスポーツオプションのマッハステアリングに交換している。

Z432Rのインパネ。Z432からラジオやヒーターを取り外し、ルーフライトや助手席のサンバイザー、グローブボックスの蓋の省略など、徹底した軽量化が施された。なお、ステアリングはスポーツオプションのマッハステアリングに交換している。

日本はもとより海外でも大ヒットを飛ばした初代Zは、昭和45(1970)年10月にレギュラーガソリン仕様と3速AT車(Z-L)を仲間に加えている。さらに翌年10月には海外仕様と同じL24型SOHCエンジンを積む240Zシリーズを国内市場にも投入。この240Zについてはこの後紹介しよう。´

日産フェアレディZ-L(S30型)諸元

●全長×全幅×全高:4115×1630×1285mm
●ホイールベース:2305mm
●車両重量:995kg
●エンジン型式・種類:L20型・直6DOHC
●排気量:1998cc
●最高出力:130ps/6000rpm
●最大トルク:17.5kgm/4400rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:6.45H-14 4PR
●新車価格:108万円

日産フェアレディZ432(S30型)諸元

●全長×全幅×全高:4115×1630×1290mm
●ホイールベース:2305mm
●車両重量:1040kg
●エンジン型式・種類:S20型・直6DOHC
●排気量:1989cc
●最高出力:160ps/7000rpm
●最大トルク:18.0kgm/5600rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:6.95H-14 4PR
●新車価格:185万円

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