カロッツェリアから2023年10月に登場した最新型のサイバーナビシリーズは、カーナビゲーションとしてもカーオーディオとしても「史上最強」を謳うにふさわしい進化を果たした。その実力を実感するために、公道でのテストドライブを実施。サイバーナビが磨きぬいてきた「信頼と楽しさ」というふたつの才能について、開発者と語り合いながらのロードトリップに出かけてみた。今回は、長い年月にわたって目指してきた「真の最高精度」にスポットを当てて紹介する。

■特別企画:「私がカロッツェリア サイバーナビを選んだ理由」記事一覧
第1回:最新モデルが誇る「史上最高音質」、そして優れたコネクト品質と伝統の高精度
第2回:「史上最高音質」の真髄を味わい尽くす、スピーカーのグレードアップに挑戦
第3回:自車位置はブレない、だから迷わない!20数年をかけてきた「真の最高精度」
第4回:HD画質がもたらす表現力と使いやすさ、多彩なエンタメ性能による「満足感」
第5回:カスタムフィットスピーカーで実感する「史上最高峰の高音質」のさらなる高み

真の最高精度を目指して「ポセイドン」が立ち上がった

GPSカーナビゲーション(以下、カーナビ)が登場して4半世紀。今や乗用車への装着率は約80%に達し、目的地へと向かう案内に利用するのは当たり前となった。その頂点に長きに渡って君臨しているのが、カロッツェリアの「サイバーナビ」だ。

画像: お話を伺いつつ、ロードトリップまでご同行いただいた山内博史氏(パイオニア株式会社 モビリティコンシューマーカンパニー マーケティング統括グループ マーケティング戦略部 所属)。営業としての活動を経たのち、サイバーナビや楽ナビなどの国内向け市販商品のマーケティングや商品企画に従事してきた。

お話を伺いつつ、ロードトリップまでご同行いただいた山内博史氏(パイオニア株式会社 モビリティコンシューマーカンパニー マーケティング統括グループ マーケティング戦略部 所属)。営業としての活動を経たのち、サイバーナビや楽ナビなどの国内向け市販商品のマーケティングや商品企画に従事してきた。

今回はパイオニアで長年にわたってサイバーナビの商品企画に携わってきた、モビリティコンシューマカンパニー マーケティング統括グループマーケティング戦略部に籍を置く山内博史さんにご登場いただき、サイバーナビの歴史を紐解きつつ、そこから生み出されたサイバーナビの実力に迫っていきたい。

そもそもサイバーナビの初代が登場したのは1997年のことになる。それまでカロッツェリアのカーナビはCD-ROMを地図データの収録に使っていたが、それをサイバーナビとなることを契機にその7倍以上もの大容量となるDVD-ROMに変更。ここからサイバーナビがカーナビの頂点へと向かう歩みがスタートした。

サイバーナビと言えば、その実力が知られているのは、測位精度が極めて高いことだ。しかし、それは一朝一夕で実現したものではない。山内さんはここでそれを示す興味深い資料を見せてくれた。それはサイバーナビが登場する以前、カロッツェリア製カーナビがライバルに比べて、この能力で劣っていたことを示す調査結果だった。

画像: テスト車は、筆者が所有する日産 ルークス。編集者、カメラマンを含む4名フル乗車で、文京区から横浜みなとみらいへと向かった。ちなみにこの日はなぜか非常に道が混んでいて、ある意味、カーナビテストにはもってこいのコンディションだった。

テスト車は、筆者が所有する日産 ルークス。編集者、カメラマンを含む4名フル乗車で、文京区から横浜みなとみらいへと向かった。ちなみにこの日はなぜか非常に道が混んでいて、ある意味、カーナビテストにはもってこいのコンディションだった。

この調査対象となった時期に山内さんはまだ入社していない。入社したのは、ちょうどサイバーナビがデビューし、その営業活動を行っている時だったという。その後、営業から商品企画に異動し、この調査結果を見せられた時は愕然としたそうだ。

なにせ、その時はすでにサイバーナビはその能力が各方面で高く評価され、カーナビのベンチマークともされていたため、何の疑いもなく営業活動に従事していたからだ。

では、サイバーナビはどのようにして高精度な測位性能を実現していったのか。実はパイオニアはこの調査結果を受け、ある組織を社内に立ち上げた。それが「ポセイドン」と呼ばれるチームだった。

リアルとシミュレーター、合わせて数百万kmを走破

名前の由来はちょっと面白い。ポジショニングの「ポ」と、精度の「セイド」を組み合わせ、これらを「どうにかしなければならない」という思いを語呂合わせで作った造語。そこには「何としても高精度なカーナビを作るんだ」という開発チームの意気込みがあった。

画像: 走りなれたドライバーならともかく、首都高速道路環状線は合流と分岐が複雑に入り組んだ非常にわかりづらい構造となっている。しかも、高架下に一般道が走っているケースが多く、カーナビが自車位置を正確に判断するには、複雑なアルゴリズムによる処理が不可欠なのだ。

走りなれたドライバーならともかく、首都高速道路環状線は合流と分岐が複雑に入り組んだ非常にわかりづらい構造となっている。しかも、高架下に一般道が走っているケースが多く、カーナビが自車位置を正確に判断するには、複雑なアルゴリズムによる処理が不可欠なのだ。

山内さんによれば、チームはなかなかに地道で根気のいる作業を日夜続けていたという。

「測位精度向上のためにまずターゲットとしたのが首都高速でした。首都高速は道路が曲がりくねっている上にトンネルがあり、加えてランプの出入口は左右バラバラ。そんな道路を攻略することを目標に据えて、開発チームはオフィスのある埼玉県川越市から首都高へと毎晩のように出掛けて走り続けました」(山内博史さん)

そうした活動の中で、2002年ぐらいまでに走行した距離は約90万km弱に至る。これにシミュレーターを加えることで、その対象エリアを全国にまで拡大し、この両方を合わせると総距離は数百万kmにまで及んだという。

こうした驚くほど大量で、しかも多彩な走行データの結果を生かして開発されたのが、「自車位置推定技術」だ。

画像: 首都高速道路出口の傾斜など、主要な側道でのデータがマップ上に記録されている。これによって、立体的な移動にともなう変化をリニアにルート案内などに反映することが可能になる。

首都高速道路出口の傾斜など、主要な側道でのデータがマップ上に記録されている。これによって、立体的な移動にともなう変化をリニアにルート案内などに反映することが可能になる。

「たとえば進行方向に向かってなだからに分岐する道があった時は、本線をそのまま進むだけでなく、側道を選ぶ可能性も考慮しなければいけません。カーナビ内では本線と側道のどちらを選んでもいいように、同時に考えさせています。その上でGPSやジャイロセンサーから実際の動きではない挙動を検知した場合には、ナビは本線上ではないことに気付きます。すると瞬時に自車位置を側道側へと切り替える。このアルゴリズムの完成によって測位能力は飛躍的に向上することになりました」

この自車位置推定技術を陰で支えているのが、マップ上の側道に埋め込まれた傾斜データである。サイバーナビで使われる地図はあらかじめそれを含めて構築されているので、ジャイロセンサーが感知する挙動変化に即座に対応できるようになったのだ。

ただし、このデータは全国の高速、有料道路の入口やジャンクションなどそのすべての場所を走行し、データとして埋め込むことが求められた。つまり、膨大な時間とリソースが必要になったわけだ。

そのため、サイバーナビの初代機であるDVDナビ発売時点では、懸案の「調査結果」についても上位になったものの、まだトップをとることはできなかった。

大容量の記憶媒体と独自のアルゴリズムが実現した高い信頼性

開発チームにとっては、何としてもトップを狙いたい!との思いは強く、その後も試行錯誤が続いていくことになる。

画像: 芝浦の出口で表示された画面。上(透けているところ)を高速道路が走るが、ランプ出口に入った段階で経路案内が一般道に切り替わり、ご覧のとおりのコースが表示された。ちなみに天王洲アイルの交差点もまたなかなかに複雑怪奇なレイアウトになっているので、正確な行先候補が3Dイラストで表示されるのは心強い。

芝浦の出口で表示された画面。上(透けているところ)を高速道路が走るが、ランプ出口に入った段階で経路案内が一般道に切り替わり、ご覧のとおりのコースが表示された。ちなみに天王洲アイルの交差点もまたなかなかに複雑怪奇なレイアウトになっているので、正確な行先候補が3Dイラストで表示されるのは心強い。

精度専用CHIPやクリスタルジャイロセンサーの搭載、マップマッチング技術のさらなる向上、そして多彩な地図表示の採用やレスポンスアップなど、目に見える部分への要求も日に日に高まっていった。

その結果、DVD以上の記憶容量や読み込み速度が高いHDDを採用することの議論が、本格的になされていった。

そして2001年、ついにHDDを搭載したサイバーナビが登場した。この時に実現できたのが、面白いように走行している道路を自動認識してルートを切り替えるカーナビの姿だった。

詳細は後述するが、今回のロードトリップ中に強く実感したのが「これなら複雑な首都高速でランプ出入口を間違えてもルートで迷うことはない」ということ。今でこそ車載カーナビでは当たり前の機能だが、当時は自動変速を目指して類似機能の開発を進めていた某トランスミッションメーカーでさえも「挑戦したが、達成できませんでした」と話していたことを覚えている。つまりは、それほど画期的なスペックだったのだ。

ポセイドンチームが目指した革新は、実はそれだけではない。

道路沿いにあるコンビニなどに立ち寄った時には、いつまでも道路上にしがみつくのではなく、マップマッチングから自車位置を外すという、本来の機能と相反するアルゴリズムも追加した。これにより、積み重なって発生する誤差を最小限にとどめることに成功したのだ。

画像: かつては高層ビル街に入るとGPSを見失い、経路案内がフリーズしてしまうケースもあったカーナビゲーション。2018年から準天頂衛星みちびきのサービスが始まったことでその不安はかなり払拭されている。それでも、自律航法制度の高さが絶大な安心感につながることに変わりはない。

かつては高層ビル街に入るとGPSを見失い、経路案内がフリーズしてしまうケースもあったカーナビゲーション。2018年から準天頂衛星みちびきのサービスが始まったことでその不安はかなり払拭されている。それでも、自律航法制度の高さが絶大な安心感につながることに変わりはない。

実はサイバーナビは測位を行う時、自車位置が大きくずれた場合以外、GPS情報はあまり使っていない。意外に思うかもしれないが山内さんはそれもまた、サイバーナビならではのこだわりだった、と語る。

「GPS衛星からの電波にばかり頼っていると、周囲の環境から影響を受けやすくかえって測位に不安定さを増すことにつながります。重要なのはカーナビ内でいかに高精度な測位を実現するか、ということなんです。ですから、サイバーナビはそのスタンドアローンな精度に徹底してこだわってきました」

そして、こうした技術は最新のサイバーナビにも引き継がれ、今も変わらず高い測位精度を発揮し続けているというわけである。

コネクト機能のメリットを実感。そしてダンジョン?探索へ

では、さまざまな努力とこだわりから育まれてきたサイバーナビの実力は本物なのだろうか。お話を伺った後、山内さんも同行の上で、パイオニア本社のある文京区からモーターマガジン社のある新橋・汐留付近を経由、横浜みなとみらいの新観光スポット「Kアリーナ」までのルートで、実際に検証してみることにした。

画像: 今回、テストに使用した「AVIC-CQ912III-DC」。最新サイバーナビのラインナップは画面サイズごとに4タイプ、(AVIC-CQ912III(9V型)/CL912III(8V型)/CW912III(7V型・200mmワイド)/CZ912III(7V型)を設定。それぞれにネットワークスティックがセットとなる「DC」が設定されている。

今回、テストに使用した「AVIC-CQ912III-DC」。最新サイバーナビのラインナップは画面サイズごとに4タイプ、(AVIC-CQ912III(9V型)/CL912III(8V型)/CW912III(7V型・200mmワイド)/CZ912III(7V型)を設定。それぞれにネットワークスティックがセットとなる「DC」が設定されている。

今回選んだ機種はサイバーナビのラインナップ中、最上位モデルとなる「AVIC-CQ912III-DC」。ハイビジョン画質に対応した、高精細な9V型ディスプレイはインパクトたっぷりだ。

走り出してすぐに実は、ちょっと意外なルートが選択されて首をかしげてしまった。本来なら首都高速の護国寺ランプから案内するのが最短なはずなのに、サイバーナビはなぜか、白山通りをそのまま都心に向かう一般道を案内し始めたのだ。

不思議に思ったが、スマートフォンで渋滞情報を確認したところ、その理由がすぐにわかった。首都高速5号線の上り線が、激しく渋滞している。サイバーナビはオンデマンドVICSの情報も反映しているスマートループ渋滞情報によってその状況をいち早く察知し最適ルートを計算、都心まで一般道を進むコースを案内したわけだ。いきなり、ネットワークにつながっているメリットを実感しながらのスタートとなった。

画像: GPSをロストした状態で、マップデータのない「道」を周回するという厳しい条件だったが、サイバーナビは二周目の周回に入っても自社位置をほぼ正確に捉えていた。

GPSをロストした状態で、マップデータのない「道」を周回するという厳しい条件だったが、サイバーナビは二周目の周回に入っても自社位置をほぼ正確に捉えていた。

最初に選んだチェックポイントは、汐留地区の地下にある周回路だった。ここは複数の地下駐車場へ接続するためにリング状に周回する、一方通行の連絡路が設けられている。ただしマップにそのデータは収録されていない。

もちろん地下なのでGPSからの電波はロストしたまま。頼りになるのは、車速パルスとジャイロセンサーによる自律航法の精度のみ・・・カーナビにとっては、ちょっとした「ダンジョン(地下迷宮)」と言えるだろう。

この場合、自車位置が走行する実際のラインをズレないことはもちろん、地上にある道路のデータにマッチングしてしまわないことまで求められる。そんな高いハードルを突破できないと出口付近で自車位置が大きくずれ、その後の案内に影響を与えてしまう可能性が高いからだ。

意地悪なテストにも、へこたれない。迷わず素早く「走り」続ける

地下周回路へ向かう入口を入っていくと、自車の表示はそれまで案内していたルートから外れ、そのまま道路がない場所をたどっていった。まるで地面を掘り進むかのようだが、サイバーナビが示す自車は迷いを感じさせることはない。ブレることなくまさに自信たっぷりに「正しい位置」を示し続ける。

画像: 地下周回路を走っている状態。地上の道路データに引きずられていないことがわかるだろう。

地下周回路を走っている状態。地上の道路データに引きずられていないことがわかるだろう。

画像: 周回路出口は、いきなり4車線の幹線道路。もしもナビが正確な出口を把握していなければ、この段階で自分の居場所がわからず、どの車線を選べば正確な目的地に着けるのか迷ってしまう可能性がある。安全マージンの確保という意味でも、高精度な自車位置測位は非常にメリットが大きいのだ。

周回路出口は、いきなり4車線の幹線道路。もしもナビが正確な出口を把握していなければ、この段階で自分の居場所がわからず、どの車線を選べば正確な目的地に着けるのか迷ってしまう可能性がある。安全マージンの確保という意味でも、高精度な自車位置測位は非常にメリットが大きいのだ。

周回路を4分の3ほど回ったところで、少し意地悪なことを思いついた。もう一周してどこまでマップマッチングせずに耐えられるか試してみよう、となったのだ。が、その「期待」は見事に裏切られた。サイバーナビは正確に位置を表示し続け、地上の出口付近でピタリと正しい位置を示してみせたのだ。

次なるチェックポイントは、首都高1号線の芝浦ランプを選んだ。この時、横浜へ向かう最短ルートとしてサイバーナビは、汐留ランプから都心環状線→首都高速1号横浜線を経由して、みなとみらいランプへと向かうルートを案内していた。

そんな中で、あえて芝浦ランプで下りて並走道路の認識精度を試そうという・・・これもまた、ちょっと意地悪な趣向である。もちろんサイバーナビは予想どおり、首都高本線から下り始めたところでルートを一般道に切り替えてくれた。

画像: もとつのいじわるチェックは、芝浦出口であえて首都高速1号線を下りてみる、というもの。出口に入る直前まではこのように情報リスト付の案内をしてくれていた。

もとつのいじわるチェックは、芝浦出口であえて首都高速1号線を下りてみる、というもの。出口に入る直前まではこのように情報リスト付の案内をしてくれていた。

画像: 本線を外れるとすぐに下道の選択に切り替わった。その反応が非常に素早い。

本線を外れるとすぐに下道の選択に切り替わった。その反応が非常に素早い。

もっとも、本当に驚くべきはその切り替えの早さだろう。今どきは高低差を認識するカーナビは普通にある。けれど、ここまで切り替え(判断)が速いナビは他にはない、と断言していい。

こうしてサイバーナビは最終目的地である赤レンガ倉庫Kアリーナへと迷うことなく案内してくれた。目的地へ到着し、ふと隣を見ると「してやったり!」と誇らしげな表情をしている山内さん。それは、ここだけの内緒のお話にしておこう。

画像: 今回、横浜まで片道1時間ほどの撮影ドライブとなったが、測位精度の高さとともに印象的だったのが、通信で取得したデータをルート案内に反映する早さだった。とくに、今回のコースは非常に混んでいる印象があったが、次々にベストなルートを検索、案内してくれるのはとても助かる。

今回、横浜まで片道1時間ほどの撮影ドライブとなったが、測位精度の高さとともに印象的だったのが、通信で取得したデータをルート案内に反映する早さだった。とくに、今回のコースは非常に混んでいる印象があったが、次々にベストなルートを検索、案内してくれるのはとても助かる。

■特別企画:「私がカロッツェリア サイバーナビを選んだ理由」記事一覧
第1回:最新モデルが誇る「史上最高音質」、そして優れたコネクト品質と伝統の高精度
第2回:「史上最高音質」の真髄を味わい尽くす、スピーカーのグレードアップに挑戦
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第5回:カスタムフィットスピーカーで実感する「史上最高峰の高音質」のさらなる高み

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