ファンに向けてのメッセージを込めた「4ドアセダン」
それでもあえて今回の新型マシンにスイッチするのは、スバルのモータースポーツ活動における「スーパー耐久レース」が持つ意味合いが、さらに深化している証と言えるかもしれません。
ラウンドテーブルで藤貫氏は、ST-Qクラスの「仲間たちとの活動」に勇気づけられてきた、と言います。とくに内燃機関を残していきたい、という想いや悩みを共有できる同志がいることが心強かったのだとか。「出口(課題の解決)」に向けて相談できる、情報交換ができる場があることで「一人ぼっちじゃない」と頑張ることができたのだそうです。
藤貫さんはさらに、スバルの開発現場におけるモノづくりに対する意識を変革する「起爆剤」としても、ST-Qマシンの開発、チームとしての耐久レースへの参戦は、大きな成果を挙げたと感じているようです。
行儀よく社内で立ち振る舞うのではなく、「(いい意味でのこだわりや思い入れ、個性、特技を持つ)変態が爪(ホンネ?本領??)を隠しているのがよろしくない」というちょっと毒のある、けれど愛に満ちたコメントからは、裏返せば今、スーパー耐久という舞台で新しい流れが生まれ始めていることに対する、確信を伺うことができたように思います。
そうした確信もあってまさに今、スーパー耐久の活動に対する取り組みの本気度が高まっている、と言ってもいいかもしれません。ちなみにベース車両と目されるWRX S4は、日本国内では全日本ラリー選手権JN-1クラスで活躍中であり、「WRCで勝ちまくったメーカー」としての源流的イメージにもつながります。
「その(WRC?)灯は消していない」と語る藤貫さんは、ST-Qクラスでの新たな挑戦を通して「ファンに向けてのメッセージ発信ができればいいかな」と、大きな期待を寄せているようでした。スバルからの新しい決意表明は、第3戦「オートポリス」5時間耐久レースにおける「デビュー戦」でしっかり届けられるはずです。(文:神原 久 Webモーターマガジン編集部/写真:井上雅行)