風のような速さを見せつけたロータリーパワー
ケレン味のないスタイリングと合わせて人気に
昭和45(1970)年以降、東洋工業(現・マツダ)は「ロータリゼーション」を旗印に、積極的にロータリーエンジン戦略を推し進めた。その第一弾として同5月にベールを脱いだのが、ブランニューモデルのカペラ ロータリーだ。
![画像: モーターのようにスムーズに吹け上がる12A型ロータリー・エンジンは120psを発生した。ロータリーの中でもマツダの主力エンジンの座を長年務めることになる。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2024/05/26/3d794d0bf62f07706744d52e6bfdc256ed045960_xlarge.jpg)
モーターのようにスムーズに吹け上がる12A型ロータリー・エンジンは120psを発生した。ロータリーの中でもマツダの主力エンジンの座を長年務めることになる。
マツダは昭和42(1967)年に世界初の2ローター・ロータリーエンジンを搭載したコスモスポーツを発売し、その後、ファミリア ロータリークーペとルーチェ ロータリークーペを送り込んでいる。この3車に続く、ミドルサイズのロータリー搭載車がカペラだ。
カペラはマツダの創立50周年を記念して企画されたクルマでもある。エンジニアの英知を結集して開発され、帝国ホテルを発表会場に選ぶなど、すべてにおいて並々ならぬ意欲で東洋工業が送り出したモデルとなった。
ボディバリエーションは4ドアセダンと2ドアクーペの2種類で、NA型4気筒エンジンを積むレシプロ・シリーズも設定されている。だが、カペラの主役となるのはもちろんロータリー搭載車だ。
スタイリングは、直線と曲面を織りまぜたダイナミックなものである。超音速ジェット機をイメージしたウエービングラインを採り入れ、ポップアップしたベルトラインや骨太のリアクオーターピラーを特徴とした。また、フロントとリアのフェンダーを絞り込み、ワイド感をアピールしている。
ヘッドライトはデビュー当初は角型だったが、昭和46(1971)年10月のGシリーズ登場を機に丸型4灯式に改められた。さらに先進的な接着式ウインドウの採用や昇降可能なクーペのリアクオーターウインドウなど、新しい装備を満載している。
![画像: 落ち着きを感じさせるクーペフォルムが印象的だ。ロータリーパワーを象徴するという六角形のテールランプは、Gシリーズの投入とともに採用された。当時はこのテールランプに後塵を拝することも多かった。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2024/05/26/1b6c37deb7a9fcfef36082484270cfaec1387acb_xlarge.jpg)
落ち着きを感じさせるクーペフォルムが印象的だ。ロータリーパワーを象徴するという六角形のテールランプは、Gシリーズの投入とともに採用された。当時はこのテールランプに後塵を拝することも多かった。
インテリアもスポーティムードあふれるデザインだ。厚いクラッシュパッドのなかに3眼メーターを組み込み、GS(グランドスポーツ)には3本スポークステアリングやセンターコンソールを採用した。クーペのフロントシートは、ライバルに先駆けてウォークインシステムを導入している。
エンジンは、カペラのために開発された 12A型2ローター・ロータリーをメインに置く。基本的には10A型と同じだが、ローターハウジングの厚みを10mm増し、単室容積で573ccの排気量を得ている。また、排気孔をハニカムポートとして排気効率を上げ、トルク特性を改善した。性能的にも10A型ロータリーを大きく凌ぎ、最高出力120ps/6500rpm、最大トルク16.0kgm/3500rpmは、2Lのスポーティカーに匹敵する動力性能だ。
サスペンションもロータリーのために開発されたといえるものだ。フロントはトーションバー式スタビライザーを備えたストラット/コイル、リアは4リンク・ラテラルロッド式で、ダンパーも高圧ガス封入式のド・カルボン・タイプ(単筒式)を奢っている。これはオイル容量がアップでき放熱性に優れた特性を持つ。
ちなみに最高速はクーペが190km//h、セダンが185km/hだ。0→400m加速も5名乗車時に16.2秒を達成、2名乗車では当時のスポーツカー並みの15.7秒を叩き出した。
![画像: Gシリーズから採用されたT字型ダッシュボードが特徴だ。ボディカラーと合わせて室内色もカラーコーディネートされるというオシャレな面も持っていた。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2024/05/26/58ad1e61e8f0273626f9b47b1ddf4cff97296c7e_xlarge.jpg)
Gシリーズから採用されたT字型ダッシュボードが特徴だ。ボディカラーと合わせて室内色もカラーコーディネートされるというオシャレな面も持っていた。
カペラの頂点に立つのはクーペGSだったが、昭和46(1971)年10月のGシリーズ追加設定時には、ロータリーでは世界初のAT仕様であるREマチックも設定された。シルキースムーズなロータリーとイージードライビングを可能としたATの組み合わせは、スポーティATの先駆けとなった。
その余勢を駆って昭和47(1972)年2月には、カペラGシリーズのトップに君臨するクーペGSIIを投入している。サスペンション強化によって車高を40mm下げ、ボディサイドにはアローストライプを配した。
足元も、165SR13ラジアルと4.5Jのホイールにグレードアップされている。エンジンもわずかながらパワーアップされ、125ps/7000rpm、 16.3kgm/4000rpmに向上し、より気持ちよさをましている。
最高速はGSと同じ190km/hだが、熟練のドライバーが5速MTを駆使すれば0→400m加速を15.6秒で走り切る実力の持ち主である。カペラGSIIは「風のカペラ」のニックネームを与えられ、サーキットでの活躍はもちろん、ワインディングでも速い走りを披露した。
![画像: REマチックと呼ばれる専用の3速ATも設定された。加速時は問題ないが、ロータリーのエンジン特性と合わせてエンジンブレーキはちょっと不足している。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2024/05/26/a0785ace4ae9eba6a802779246c656b12e4683b3_xlarge.jpg)
REマチックと呼ばれる専用の3速ATも設定された。加速時は問題ないが、ロータリーのエンジン特性と合わせてエンジンブレーキはちょっと不足している。
当時、カペラの六角形のテールランプ(初期型は丸型)に脅威を感じたドライバーも多かったはずだ。ロータリーエンジンが一番輝いた時代の一台となった。
VARIATION
![画像1: VARIATION](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2024/05/26/32eeb54eb6dbdac80b0cb9bcf057e69b9f21b47f_xlarge.jpg)
昭和45(1970)年5月に登場した初代カペラREスポーツがこれだ。このときはマツダ入魂のロータリーエンジンの搭載を表すとして、丸目4灯のテールランプを装着した。ヘッドランプは角型2灯だった。昭和46 (1971)年に追加されたGシリーズからはヘッドランプが丸型4灯になった。テールライトは角型4灯に変更されている。
VARIATION
![画像2: VARIATION](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2024/05/26/bc574412c9c8e0dc6f1919df8fd4864b3cac79cd_xlarge.jpg)
昭和47(1972)年3月に登場したカペラREクーペGSII。これには5速MTが採用され、4cm低くめられた車高、スポーツ走行に対応して固められたサスペンション、+5psの125psエンジンなど、グレードアップされたカペラの最強力版となる。減速比の変更で最高速は190km/hと同じだったが、0→400m加速は15.6秒にタイムアップしている。価格は114万円とリーズナブル。
マツダ カペラ ロータリークーペGS(S122型)諸元
●全長×全幅×全高:4150×1595×1395mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:975kg
●エンジン型式・種類:12A型・2ローター
●排気量:573cc × 2
●最高出力:120ps/6500rpm
●最大トルク:16.0kgm/3500rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:165SR13
●新車価格:87万円