走りのためのPHEV化だが、乗り味はいたってジェントル
さらにこのクルマの性格を雄弁に物語っているのがバッテリー搭載量だ。容量は6.1kWhで、EV走行距離は16kmに過ぎない。最初に記したように、PHEV化はあくまで走りのためなのだ。
外観は、いかにも猛々しい。とくに、縦ルーバーを備えた専用のフロントグリルを備えたフロントマスクは、いかにも好戦的だ。ボディ同色のホイールアーチが大きく張り出しているが、21インチの大径タイヤ&ホイールはそこからはみ出さんばかりである。
それでも日常域の走りは、いたってジェントルである。コンフォートモードでは発進を電気モーターが担うハイブリッド走行を行い、頻繁にエンジンが停止する。エレクトリックモードなら最高125km/hまでEV走行が可能だ。本領を発揮するのはスポーツモードから。切り替えると排気音が一気に野太くなる。
まず印象的なのは、一瞬のラグも感じさせることなく立ち上がるパワーとトルクである。おかげで車重2350kgにもなるクルマにもかかわらず、軽々と発進し、そして速度を高めていく。音質低めのエンジンサウンドは小気味良く、加速も勢いがある。しかも、どの回転域からでもアクセルペダルを踏み込めば即座に加速態勢に入り、待ち時間がないのが良い。
当然、これには高出力モーターも大いに貢献しているが、加速感はあくまでエンジンのビートの効いた吹け上がりに呼応してパワーが盛り上がる感覚。それが良い。
積極的にアクセルペダルを踏みたくなるフットワーク
フットワークの仕立てはニュートラルステア感が非常に強い。リアモーターが強力なだけでなく、前後重量配分もリア寄りなことも効いているのだろう。ターンインは軽やかだし、コーナー出口ではリアから押し出してくるような感覚もあり、ついついアクセルペダルを踏ませるのである。
直4ユニットを用いたAMGモデルであるこの63シリーズ、そして43シリーズ。噂ではユーザーの支持はいまひとつで、V8の再登板もあり得ると囁かれている。
もちろん、その気持ちもわかるのだが、とくにこのGLCに関して言えば、SUVということで車重が嵩むこともあり電気モーターのレスポンスと高出力は大いにプラスに働いていた。内燃エンジンだけでは実現できない走りが、クルマの魅力を押し広げているのだ。(文:島下泰久/写真:永元秀和)
メルセデスAMG GLC63 S Eパフォーマンス 主要諸元
●全長×全幅×全高:4750×1920×1635mm
●ホイールベース:2890mm
●車両重量:2350kg
●パワートレーン:2L直4ターボ+モーター
●総排気量:1991cc
●エンジン最高出力:350kW(476ps)/6750rpm
●エンジン最大トルク:540Nm(55.5kgm)/5250-5500rpm
●モーター最高出力:150kW(204ps)/4500-8500rpm
●モーター最大トルク:320Nm/500-4500rpm
●トランスミッション:9速AT
●駆動方式:4WD
●WLTCモード燃費:9.8km/L
●タイヤサイズ 前:265/40R21、後:295/35R21
●価格:1780万円