新開発エンジンと新しい「ALL MODE 4×4-i」システムを採用
2010年11月2日に追加モデルとして発表されたのが、1.6L直噴DOHCターボ「MR16DDT」型エンジンを搭載する16GT(FFモデル)、そして16GT-FOUR(4WDモデル)である。
ジュークが初の搭載車種となるこの新開発エンジンは、ガソリン直噴システムと小径の高効率ターボを組み合わせ、吸排気カムシャフトの両方に可変バルブタイミング機構を装備。フリクションの低減を徹底的に追求するなどして、最高出力140kW(190ps)/5600rpm、最大トルク240Nm(24.5kgm)/2000-5200rpmという意欲的なスペックを実現した。トランスミッションはマニュアルモードを備えたエクストロニックCVT-M6が組み合わされる。
その4WDシステムも新しい趣向が凝らされたもので、コーナリングの楽しさをより強くアピールする新しい「ALL MODE 4×4-i(トルクベクトル付)」システムが搭載される。
これは、エクストレイルに採用されている舵角センサーやヨーレートセンサーからのデータを用いて、クルマのスポーティな動きを実現するよう前後の駆動力配分をコントロールする「ALL MODE4×4i」をさらに発展させたもの。リアのファイナルドライブユニットに2組の電子制御カップリングを組み込み、左右リアホイールへの駆動力配分量をアクティブに調整する機構が組み込まれたのだ。
モード切り換えスイッチも備え、スポーティな走り味が楽しめる「4WD-V」、滑りやすい路面での安定性を重視した「4WD」、そしてFFで走る「2WD」という3種類から選べる。
リアサスペンションは、FFモデルのトーションビーム式からマルチリンク式に変更された。
マニュアルシフト的な加速感覚が味わえるステップ変速制御CVT
今回、横浜の日産本社を起点とする一般道と都市高速を組み合わせたルートで試乗したのは16GT-FOUR。その新型エンジンは、十分に素速い力強さを見せてくれた。
センターコンソールのコントロールディスプレイで設定できるドライブモードでは、ノーマル/スポーツ/エコの3種類から選択できるが、16GT-FOUR(16GTも)でスポーツモードを選択すると、加速する際にCVTがステップ変速制御となり、マニュアルシフト的な加速感覚が味わえるというのも面白い設定だ。ただしノーマルモードの走行だと、あくまでもCVTらしい味わいである。
乗り心地は、「GT」というネーミングをスポーティ的だと解釈したと思える専用設定のサスペンション、そして17インチのタイヤにより、路面の状態をかなり正直に伝えてくるものだった。ボディの細かな上下動が常にしっかりと身体に伝わってくるので、ダイレクト感がある。
都市高速に入ると、さすがにパワーの余裕度がよくわかった。ジャンクションから本線への合流や、追い越し加速時などアクセルペダルを深く踏み込むような状況では、いったんエンジン回転数が先行して高まり、そこら瞬時に強力なゴムひもでグイーンと引っ張られて行くような、まるでワープ感覚とでも呼びたくなるユニークな加速感が楽しめた。マニュアルモードのシフトダウン時に、エンジンの回転数とCVTの変速比を同期させる「シンクロレブコントロール」が搭載されているのも楽しい。
ただ4WDシステムやトルクベクトリングに関しては、好天の一般道の試乗でその効果を実感することは難しかった。
その走る楽しさは、やはりワインディング路やミニサーキットなどといったシチュエーションによく似合う気がする。ただそうなると、クロスオーバースタイルのボディでなくてもいいのでは、という気持ちも芽生えてくる。今後の展開にも期待したい。(文:Motor Magazine編集部 香高和仁/写真:永元秀和)
日産 ジューク 16GT FOUR 主要諸元
●全長×全幅×全高:4135×1765×1570mm
●ホイールベース:2530mm
●車両重量:1380kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1618cc
●最高出力:140kW(190ps)/5600rpm
●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/2000-5200rpm
●トランスミッション:CVT-M6
●駆動方式:4WD
●車両価格:245万1750円(2011年当時)