2台でピットストップのタイミングを変えたフェラーリの巧みな戦略
波乱の要因の3つめは、高温もあってか、ミディアムタイヤのタレが予想以上に大きかったこと。レース前から1ストップが最速と予想されていたが、ほぼすべてのチームがレース用にハードタイヤを2セット残していたため、必要に応じて2ストップに変更できる柔軟性を持っていた。
その余裕が迷いにつながった部分もあったように思われるし、新たに舗装し直された路面でのタイヤのパフォーマンスを完全に評価する十分なデータがなく、レース中のドライバーの感覚とタイヤ管理能力に頼らざるを得ない部分もあった。
そんな中、1回目のタイヤ交換は予想よりもやや早く、14周目にマクラーレンのノリス、15周目にフェラーリのルクレール、16周目にマクラーレンのピアストリ、19周目にフェラーリのカルロス・サインツがミディアムタイヤからハードタイヤに交換している。
ポイントはトップを走るマクレーラン勢がフェラーリ勢よりも早く2回目のタイヤ交換に動いたこと。マクラーレンとしては、ルクレールが15周目にミディアムタイヤからハードタイヤに交換した時、残り周回数が38周もあることから「ルクレールは2ストップ」と判断したのだろう。早めにフレッシュなタイヤに交換して、万が一フェラーリ勢(とくにサインツ)が2回目のタイヤ交換を行わなくても、コース上で追い上げてオーバーテイクする戦略に出た。
一方、マクラーレン勢の2ストップ戦略を見たフェラーリは、そのままストップせずにマクラーレン勢の前で走り切る戦略を選択した。ハードタイヤはまだ機能していたし、同じ2ストップ戦略ではマクラーレンに勝てないからだ。
この戦略は見事に成功し、ブロック役に回ったサインツはマクラーレン勢の追い上げに飲み込まれたが、ルクレールはピアストリに2秒664の差をつけたままトップでゴールした。