この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第102回目は、スペシャリティカーの王道を具現化した、日産シルビア2000ZSE-Xの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

日産のスペシャリティカーとして復活
スポーティなイメージ定着させるパワーユニット

昭和54(1979)年3月にフルモデルチェンジしたシルビア。日本車のフルモデルチェンジは、昭和50年代当時は通常4年で行われることが慣例となっていた。だが、3代目となるS110型シルビアは、先代モデル(2代目)の登場から3年5カ月という比較的短い期間で市場に投入されている。

画像: スペシャリティカーと位置付けられ、乗り味はソフトで乗用車的なものになっているが、ハードなアタックもこなせる運動能力もその魅力のひとつだった。

スペシャリティカーと位置付けられ、乗り味はソフトで乗用車的なものになっているが、ハードなアタックもこなせる運動能力もその魅力のひとつだった。

それまでのシルビアが販売面で満足な結果を残すことができなかったことに大きな理由があるのだが、ひと足先にホンダから発表されたプレリュードが、完全なパーソナルカーという独特のセグメントを確立してしまったことも時期を早めた一因だ。

スタイリングは、直線を基調とした端正なもの。基本的なデザインコンセプトは、当時フォードから発売されていたマスタングIIなどとも強い類似性を示すもので、若干オリジナリティには欠ける印象が強かった。

だが、先代のシルビアがデザイン的にもかなり中途半端な処理だったことを考えると、ユーザーに斬新な印象を与えるには必要十分なスタイリングだったと評価できる。実際に最初に登場した2ドアハードトップクーペのボディは、端正な中にもある種のスポーティな演出を感じるもので人気も高かった。

53年排出ガス規制に対応するため、エンジンはすべて従来のL型からZ型へと変更されている。実際に搭載されたエンジンは3種類で、最も高性能だったのはZ20E型と呼ばれた1952ccの直列4気筒SOHCで、最 高 出 力は120ps/5600rpm。その 下 に1770ccのZ18E型(115ps)と、さらにベーシックなシングルキャブレターと組み合わされたZ18型(105ps)が設定されていた。

その後、シルビアには、さまざまな高性能ユニットが与えられることになるが、やはりその中でも話題性が高かったのは昭和56(1981)年5月に追加されたターボモデルだろう。シルビアの熟成を進める中で、日産はスポーティなイメージをもたせることを最重要視したのだ。

画像: シルビアとしては初めての2ℓエンジンのZ20E。ツインプラグの4気筒Z型エンジンとしては最大級のものだ。RSの発売と同時にラインアップから消えた。

シルビアとしては初めての2ℓエンジンのZ20E。ツインプラグの4気筒Z型エンジンとしては最大級のものだ。RSの発売と同時にラインアップから消えた。

シャシ回りでは、ようやく旧式のリーフリジッド式リアサスペンションが廃止されたことが話題だった。そもそも先代のシルビアでもリーフスプリングがそのまま継承されることなどデビュー前には誰も予想していなかったのだから、これは時代には遅れた進化だった。

結果、採用されたサスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアが4リンク+コイルという構成だが、基本的にこのサスペンションやフロアパネルはバイオレットの流用と考えられる。

もちろんシルビアへの流用にあたっては、横力を受け止めるオフセットコイルスプリングの採用など改良を受けた部分は数多い。ベーシックグレードを除いたほとんどの車種に前後ともスタビライザーが備えられた。 

ブレーキはフロントがディスク、リアがドラムという構成が基本だが、2ℓモデルではリアにもディスクブレーキが備えられていた。ホイールも従来型より1インチ大径の14インチとなり、その運動性能を飛躍的に高めることに貢献した。2Lモデルでエンジン回転数感応式のパワーステアリングが標準装備されたのも、やはり当時としては大きな話題のひとつだった。

当時のインプレッションを振り返ると、シルビアの最強モデルが積む2LのZ20E型は、従来の1.8Lより5ps/1.5kgm強力だが、トルク感は同等なフィーリング。ハンドリングはアンダーステアが減り、コーナリング限界も高くなっている。ただ限界を超えると強烈なオーバーステアになる傾向があると記してある。

ちなみにガゼールは、シルビアと共通のメカニズムや装備内容などを持つ兄弟車種。昭和60年代から徐々にその数を減らしていった日産の兄弟車だが、ガゼールの名も昭和61(1986)年に日産の車種ラインアップから消滅し、シルビアのみが継続して販売された。

画像: MCで追加されたデジタルメーター車のインパネ。GT仕様で、ボイス・インフォメーション(警報やガソリン量の残量など)などを採用している。

MCで追加されたデジタルメーター車のインパネ。GT仕様で、ボイス・インフォメーション(警報やガソリン量の残量など)などを採用している。

3代目S110型シルビアは、そのスポーティな雰囲気と、ホンダのプレリュードと同様にパーソナルユースに供されるスペシャリティカーという明確な位置づけで、若いユーザーを中心に高い人気を誇った。ここでは触れないが、昭和56(1981)年に設定されたターボバージョンなどの人気も絶大なものとなった。

VARIATION <ガゼール2000ZSE-X>

画像: VARIATION <ガゼール2000ZSE-X>

3代目シルビアは販売チャンネル(日産・モーター店)の関係で兄弟車のガゼールも販売されていた。基本的には同一車種となる。昭和54 (1979)年8月にはハッチバック車を追加し、昭和55年6月にはサンルーフ車を設定して装備の充実を図り人気車となった。フェイスリフトは翌年5月のマイナーチェンジで行われた。

VARIATION <シルビアHBターボZSE-X>

画像: VARIATION <シルビアHBターボZSE-X>

動力面でライバルに一歩遅れを取っていたシルビアにターボが登場したのは昭和56年5月のことだ。これは2Lターボではなく135ps/20.0kgmを発生する1.8LのZ18ETを搭載している。ホリデーオート誌のテストでは0-400m加速で16.95秒を記録し、俊足ぶりを示した。ターボ車は日産ファン、シルビアファンに好意的に受け入れられた。

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