この連載では、昭和30年~55年(1955年~1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第103回目は、走る楽しさを存分に味あわせてくれた、TE71型トヨタ カローラ・レビンの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

2T-G型直4DOHCの最終進化形を搭載して登場
FRと軽量ボディでファントゥードライブを実現

昭和54(1979)年の3月にE70系へと発展を遂げたカローラ/スプリンター。そのモデルチェンジに伴って、スポーツモデルのレビン/トレノも同時に新世代へと進化している。

画像: 2T-GEU型エンジン。スポーティグレード車(SR/SE)に積まれ た1.5 L 直4SOHCの3A-Uエンジンとは一線を画した、トヨタのスポーツエンジンの代名詞だった。

2T-GEU型エンジン。スポーティグレード車(SR/SE)に積まれ た1.5 L 直4SOHCの3A-Uエンジンとは一線を画した、トヨタのスポーツエンジンの代名詞だった。

シリーズ全体では膨大な数のバリエーションが用意されていたカローラ/スプリンターだが、このレビン /トレノに設定されたボディは、直線を基調に極めてスタイリッシュにまとめられた3ドアハッチバッククーペのみとなった。

強い傾斜角で寝かされたテールゲートや、ウエッジシェイプの強くなったフロントセクションの処理など、当時の日本車の中でもこのレビン/トレノのボディは実に斬新な印象を与えた。

搭載されたエンジンは、もちろんトヨタ伝統の1588cc直列4気筒DOHC、すなわち2T-G型の最終発展型である2T-GEU型。EFIとの組み合わせにより、8.4という圧縮比から115ps/6000rpmの最高出力と、15.0kgm/4800rpmの最大トルクを得た。

このパワーユニット自体は従来型のレビン/トレノに搭載されていたものと完全に同一で、当然のことながらパワースペックも一切変更はない。それでも排出ガス規制でスポーツエンジンが少なくなった中で、1.6Lクラスで唯一まともなスポーツフィールを保ったのが、 2T-G型DOHC だった。

アクセルレスポンスと 高回転域でのパンチは明らかに他車の SOHC とは一線を画すものだった。組み合わされるトランスミッションも5速MTのみと、走りの性能をフルに追求しているのがわかる。駆動方式はもちろんFRだ。

シャシ回りは、フルモデルチェンジに伴ってかなり大がかりな変更が加えられている。サスペンションはフロント側がマクファーソンストラット、リア側がラテラルロッド付きの4リンクに改められ、さらに前後ともにスタビライザーが装着された。

このレビン/トレノが最も大きな特徴とした、高いロードホールディングと運動性能は、このシャシチューニングによって可能となったのだ。操縦性はクセのない穏やかなもので、先代のリーフリジッドから4リンクに変更されたリアサスにより、限界域でも接地性が向上。軽量化されたボディの効果も相まって、操縦性は良好だった。

画像: ケレン味のない直線基調の3ドアハッチバッククーペスタイルは、純粋にかっこいいと思えるデザインとなっていた。スポーティムードも非常に高いものとなった。

ケレン味のない直線基調の3ドアハッチバッククーペスタイルは、純粋にかっこいいと思えるデザインとなっていた。スポーティムードも非常に高いものとなった。

ステアリング形式は、従来型でも使用されていたボールナット方式がそのまま継承されている。ただそのギアレシオは16.1とクイックな設定で、これがレビン/トレノの俊敏な動きに大きく貢献した。ブレーキはもちろん4輪ディスク。当時のスポーツモデルとしては、必要にして十分なメカニズムが導入されていたことになる。

TE71型レビン/トレノの最大の魅力は何といっても全体的なバランスの高さにあった。搭載された2T-GEU型エンジンは、DOHCエンジンらしい爽快な吹け上がりが信条。高回転域でのトルクフルでスムーズなフィーリングには、多くのスポーツカーマニアが魅了された。

新型のボディを得たことで、室内の静粛性も飛躍的に高まった。これはともすればスポーツフィーリングをスポイルする結果になるのではないかと心配されたが、実際には不快に感じるノイズのみが巧みに遮断されているという印象が強かった。官能的なDOHCエンジンのサウンドは、その魅力を損なうことなく伝えられていた。

フルモデルチェンジによって大きく進化を果たした部分と言えば、それはやはり軽量化と、室内の居住空間の拡大だろう。最も車重の変化が激しかったのは、カローラ/スプリンターの主力モデルとなる1500cc車だったが、レビン/トレノの場合も、装備によって若干の差はあるものの、最大で25kgほどの軽量化が実現されている。

スポーティなイメージを与えられたこのレビン/トレノは、モータースポーツマニアにも大いに好感を持って受け入れられた。レビンは発売当時134万3000円に設定された価格も実に魅力的で、何よりそのバランス感覚に優れた走りに多くのマニアは魅力を覚えた。

画像: 本革巻きの2本スポークステアリングや大型のフットレストがGT車である証と言える。首振り式(左右15度)のセンターコンソールも話題となった。

本革巻きの2本スポークステアリングや大型のフットレストがGT車である証と言える。首振り式(左右15度)のセンターコンソールも話題となった。

この時代、実際にモータースポーツシーンには数多くのTE71レビン/トレノが導入され、レースやラリーで活躍した。それが、さらにこのクルマの人気を高める原動力となったのだ。

VARIATION <スプリンタートレノ(TE71型)>

画像: VARIATION <スプリンタートレノ(TE71型)>

同時に発売されたスプリンター系はセダンを除いて斜めにスラントしたフロントマスクを持っていたのが特徴となる。2T-GEU搭載車はスポーティバージョンの代名詞であるトレノを筆頭に、セダン/リフトバック/ハードトップの各GT車となっていた。どれも当時のスポーティカーファンのハートを掴んだ。

VARIATION <カローラ・セダン1600GT(TE71型)>

画像: VARIATION <カローラ・セダン1600GT(TE71型)>

カローラ・レビン/スプリンター・トレノはスタイリッシュなクーペのみに与えられた名称で、セダン/ハードトップ /リフトバックの2T-GEU搭載車には1600GTの名が与えられた。セダンは見た目にはごく普通の乗用車。丸型4灯で、カリーナにも似ている。ただ、走らせればまさに羊の皮を被った狼にふさわしい実力。

トヨタ カローラ・レビン(TE71型)諸元

●全長×全幅×全高:4240×1625×1325mm
●ホイールベース:2400mm
●車両重量:975kg
●エンジン型式・種類:2T-GEU・直4DOHC
●排気量:1588cc
●最高出力:115ps/6000rpm
●最大トルク:15.0kgm/4800rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/70HR13
●新車価格:134万3000円

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