1974年にドイツで誕生したフォルクスワーゲン ゴルフは、2025 年に日本導入50周年を迎える。ゴルフは当初からスポーティな車両として設計され、1974年の初期段階で、将来の GTI (1976 年にデビュー) が国際 FIA 規則に従って開発されることが想定されていたという。そうした背景のもと、その後、ゴルフにはモータースポーツと深く関係したスポーティなモデルが多数登場している。今回の特集シリーズでは、「スポーティゴルフの50年」を振り返り、さまざまな世代の忘れることのできない8台の象徴的なモデルを紹介しよう。第6回は1993年に製造されたゴルフ III ラリー A59 プロトタイプをピップアップする。
WRC制覇をターゲットに始まったプロジェクト
車両番号 06
ゴルフ III ラリー A59(1993年)
Golf III Rallye A59
1993年に製造されたゴルフ ラリー A59 のプロトタイプは、新しいFIA世界ラリー選手権WRC参戦車両として試作されたモデル。冷却を強化するためのウォーターインジェクションを備えた新開発の275psターボエンジンは、テストで良好なパフォーマンスを発揮し、技術的にも新開発のコンピューター制御の4輪駆動システムが大きな注目を集めた。
さらに目を引いたのはデザインで、ユニークなフロントバンパーとリアバンパー、3つのエアインテークと2つのベントを備えたボンネット、リアのダウンフォースを高める大型ルーフスポイラー、ボリュームのあるサイド スカート、16インチのアルミホイール、それを収める膨らんだフェンダーなどが、これまでにない異様な力強さを示していた。
ただ、新しいグループA規定の下でゴルフ ラリー A59を限定的に生産してFIA世界ラリー選手権WRCに参戦するという当初の構想はプロジェクトが完了する前に廃案となり、グループA規定要件を満たすベースモデルも生産されることなく、モータースポーツへの関与もすべて中止された。