2011年3月、新しいSUVが続々と登場する中、リンカーンMKXが内外装からパワートレーンに至るまで全面的に刷新されて登場した。SUV人気が大きな高まりを見せる中、リンカーンMKXはどのように変わったのか。今回は上陸後間もなく行われた試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年5月号より)

パワートレーンまでも全面改良、フルモデルチェンジなみの進化

SUVは、セダン、ワゴンに続く主力ジャンルに成長した。どのメーカーもSUVをそのラインナップに加え、ここ数年を見ても多くの新しいSUVが日本へ上陸している。BMW X1、フォルクスワーゲン ティグアン、アウディQ5……。そしてフォードではKuga、リンカーンブランドではMKXが導入されている。

リンカーンがCUV(クロスオーバー・ユーティリティ・ビークル)と呼ぶMKXは、2008年から日本に導入され、アメリカンテイストを全面に主張したデザインと個性がファンを獲得した。そのMKXのエクステリア、インテリア、そしてパワートレーンが全面的に改良された。これはフルモデルチェンジクラスの進化である。

まず最初に対面して視界に入ってくるのは、リンカーンファミリーである証の“スプリット・ウイング・グリル”だ。このグリルは、1941年モデルのリンカーンコンチネンタルで採用された“ウオーター・スプリット”デザインからインスパイアされたものであり、21世紀のリンカーンを象徴するアイコンである。

インテリアもプレミアム感あふれる独特の雰囲気がある。贅沢に使われたレザーやウッドは、触れたときの感触がとてもよくプレミアム感の演出が上手い。ひとつひとつの素材がよく吟味されているのだろう。また、特徴的なメーターと新しく採用されたコントロールインターフェイス“My Lincoln Touch”も興味深いものだ。

その“My Lincoln Touch”には、多彩な情報が表示できる4.2インチのLCDディスプレイがメーターの左右にそれぞれ用意される。左側が水温、燃量、走行距離、燃料消費量、瞬間燃費や各種の車両設定情報が表示されるマルチファンクションディスプレイで、右側がオーディオや空調関連などの情報が表示されるインフォテイメントディスプレイである。さらに8インチLCDタッチパネル式のセンターカラースクリーンも用意され、ここでも各種設定や操作、情報の表示ができ、操作頻度の高いオーディオやエアコンはセンターカラースクリーン下でフィンガータッチ&スライダー操作ができる。このあたりの操作感覚はとても新鮮である。

画像: エクステリア、インテリア、そしてパワートレーンまで全面的に改良されたリンカーンMKX。撮影車両のボディカラーはホワイトプラチナム、内装はブラック、シート素材は本革。

エクステリア、インテリア、そしてパワートレーンまで全面的に改良されたリンカーンMKX。撮影車両のボディカラーはホワイトプラチナム、内装はブラック、シート素材は本革。

2t以上もあるボディが滑らかに走り出すジェントルな乗り心地

パワートレーンも大きく進化した部分である。従来の3.5L V6に代わり3.7L V6エンジンが搭載され、最高出力は40psアップして309psとなった。これは2010年10月の改良でマスタングに搭載されたV6エンジンと同じものだ。吸排気独立可変バルブタイミング機構Ti-VCTを採用し、燃費も向上しているという。

トランスミッションは、マニュアルモードでのドライブが可能なセレクトシフトを新たに採用した6速ATが組み合わされ、駆動方式は通常時はFFだが、状況に応じて最適なトルクを四輪に配分する4WDシステムが採用される。

ラゲッジルームは通常時915L、最大で1945Lにまで拡大可能だ。また6:4分割可倒式リアシートは、ラゲッジルームに用意されたスイッチを使いワンタッチで倒すことができる。さらに電動リフトゲートはリモコンキーからの操作も可能で開閉に要する時間は約10秒である。

走り出して驚いたのは、そのスムーズさである。アクセルペダルに乗せた足に軽く力を入れただけで2t以上もあるボディが滑らかに走り出す。市街地の試乗では2000rpmを超えることはほとんどない。ジェントルな乗り心地と言ってもいい。だが、ワインディングになるとその印象は一変する。セレクトシフトを駆使した積極的なドライビングでは目線の高さこそ違うが、ボディの大きさや重さまで忘れてしまうセダンライクな走りが十分に味わえるのだ。

しかし、一番得意なのは高速道路の長距離移動だろう。余裕あるサスペンションのストローク量と侵入音が抑えられた静かな室内は快適な移動空間を約束してくれるだろう。さらに使用燃料はレギュラーなので、財布にもやさしい。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充)

画像: ウッドとレザーを上品に調和させたインテリア。プレミアム感あふれる独特の雰囲気がある。触れたときの感触もとても心地よい。

ウッドとレザーを上品に調和させたインテリア。プレミアム感あふれる独特の雰囲気がある。触れたときの感触もとても心地よい。

リンカーン MKX 主要諸元

●全長×全幅×全高:4740×1930×1685mm
●ホイールベース:2820mm 
●車両重量:2030kg 
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3721cc
●最高出力:227kW(309ps)/6500rpm
●最大トルク:380Nm(38.7kgm)/4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD 
●車両価格:630万円(2011年当時)

This article is a sponsored article by
''.