3ペダルの6速MTのみで2ペダル仕様のDCTは設定されず
握り応えのある太いリムを持ったステアリングホイールをアジャストし、スターターボタンにタッチする。アクセルペダルをちょっと踏み込み過ぎたために、後方からブオンという低い破裂音のような、ちょっと演出過多かなと思わせるエキゾーストサウンドが耳に届いた。搭載されているエンジンは、ツインパワーターボ(この場合は2基のターボ)を装備した直噴3L 直列6気筒で、最高出力は340ps/5900rpm、最大トルクは450Nm/1500-4500rpmを発生する。
2ペダルのATやDCTに慣れている日本の皆さんにはちょっと重すぎるに違いないクラッチペダルを踏み込み、同じく抵抗のあるシフトレバーで1速を選び、アクセルペダルにのせた右足に力を入れると、自重1495kgの2ドアクーペはとても力強い加速を開始する。EVの電気モーターも立ち上がり加速が凄いが、この1シリーズMクーペの加速はそんなものではなく、まるで後ろから突き飛ばされたよう。しかもシフトアップしていく度にこの感覚が繰り返されるのである。
この日は公道上のテストだったので試すことはできなかったが、0から100km/hまでの加速は4.9秒である。一方、最高速度の250km/hはアウトバーンでちょっとした距離があれば容易にマークすることができた。超高速域の直進性はホイールベース2660mmのコンパクトクーペとしては卓越している。
動力性能に続いて驚いたのは乗り心地の良さであった。アウトバーンでのハイスピード域ではもちろんのこと、日本での法定最高速度100km/hを6速で走行中はまるで良質な乗用車に乗っているようで、ノイズや振動はもちろんスポーツシャシでは避けられなかった荒っぽさもまったく感じられなかった
アウトバーンを降りて一般道路の走行でもこの「ベビーM」は道路上を泳ぐイルカのようにすばしっこい。ステアリングはEPSではなくギア比12.5の油圧式ラックアンドピニオンなので自然で正確な手応えで、コーナリングでは理想的なラインをトレースしていくことができる。
このスポーツクーペモデルの後席は狭く、多少の不便はあるが一応4シーターとして使うこともできる。また370Lの独立したトランクもあるので十分な実用性も持ち合わせている。しかもドイツにおける価格は5万0500ユーロ(約581万円)と同程度のスポーツカーと比べると非常にリーズナブルである。
ところでこの1シリーズMクーペだが、これまでホモロゲーションの問題で日本への輸出ができないと言われてきた。しかしM社では現在少数限定輸入枠での販売を検討しているらしい。詳細は不明だが、もし可能であればビッグニュースである。(文:木村好宏)
![画像: 1シリーズクーペをベースにしたインテリアは、黒を基調に赤いステッチがスポーティなアクセントとなっている。トランスミッションは6速MTのみ。2ペダルのDCT搭載車は用意されない。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2025/02/05/a20be2d4ab25454da1475492634ca72c792085e5.jpg)
1シリーズクーペをベースにしたインテリアは、黒を基調に赤いステッチがスポーティなアクセントとなっている。トランスミッションは6速MTのみ。2ペダルのDCT搭載車は用意されない。
BMW 1シリーズ Mクーペ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4380×1803×1420mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1495kg
●エンジン:直6DOHCツインターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:250kW(340ps)/5900rpm
●最大トルク:450Nm/1500-4500rpm(オーバーブースト時500Nm)
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●最高速:250km/h(リミッター)
●0→100km/h加速:4.9秒
※欧州仕様