自分自身で感じて、触れて、コントロールするGT
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ダウンサイジングの時代に逆行するかのような、6LのV12 DOHCは自然吸気で573psの最高出力と620Nmの最大トルクを発生する。
重厚感のあるドアを開け、サイドサポートの張り出した運転席に滑りこむ。クリスタル製のキーを押しこむと、低い唸り声とともに最高出力573psと最大トルク620Nmを発生する6LのV12ユニットが目を覚ます。Dレンジのまま走れば、シーケンシャルで変速できる6速AT「タッチトロニック2」が2000rpmにも満たないところで滑らかにシフトアップし、まるでサルーンのように粛々と走る。
もちろん、このクルマの本領が発揮されるのはそれからだ。ステリングホイールの赤いボタンを押してSモードを選び、アクセルを踏み込んだ途端、エンジン回転数の高まりとともに強大なトルクが沸き上がる。かなりのハイスピードでコーナーに侵入しても、アルミシャシとCFRP製パネルを組み合わせて高いねじり剛性を得たボディが強大なパワーをしっかりと受け止めてくれる。
3段階で選べる足まわりのうち、ノーマルは乗り心地が良く、1度ボタンを押せばスポーティな走行に対応すべく足まわりを固める。最もハードな足まわりの設定とローンチコントロールは、サーキット走行用と割り切るべきだろう。
このクルマのすべてを語るには、試乗時間も紹介スペースも限られているが、総じて「自分自身で感じて、触れて、コントロールするGT」と評すれば良いだろうか。おとな2人がゆったり座れる室内空間と、368Lのラゲッジスペースを備え、普段はGTとしてジェントルに走り、いざスポーティな走行をしたいと思えば、V12が咆哮を上げてスーパーカーに変容する。
税込み3149万4750円!という車両価格も含め、現代でも「憧れのスーパーカー」と呼ぶにふさわしい、まさにアストンマーティンらしいクルマだった。
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イタリアやドイツのスーパースポーツカーとは違った品格を感じさせるインテリア。日本仕様のハンドル位置は左右とも選べる。
アストンマーティン ヴァンキッシュ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4692×1912×1294mm
●ホイールベース:2740mm
●車両重量:1739kg
●エンジン:V12 DOHC
●総排気量:5935cc
●最高出力:421kW(573ps)/6750rpm
●最大トルク:620Nm(63.2kgm)/5500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:トランスアクスル式FR
●燃料:プレミアム
●JC08モード燃費:未発表
●タイヤサイズ:前255/35ZR20、後305/30ZR20
●当時の車両価格(税込):3149万4750円