オープンだからこそ主張したい個性と感性
優雅なスタイリングの2ドアクーペ、グラントゥーリズモをベースとした4シーターのオープントップがグランカブリオである。

グラントゥーリズモとデザインは変わらないが、各部素材やディテールまで拘った上質なインテリア。
オープン化にともなって、持ち前の美しいデザインを損なわずに、むしろ「ブラック」「マリーン」「チタングレー」「グレージュ」「ガーネット」の5色から選べるファブリックの幌との組み合わせなど、オープンモデルならではの表現で優雅さを増幅させている印象だ。しかも最低地上高をグラントゥーリズモよりも高く設定する(もちろんリフターも付く)などして、快適性もより高めている。
と言っても、グラントゥーリズモと同様にその長いノーズの後方に搭載されている心臓は、3LのV6ツインターボ「ネットゥーノ」エンジンだ。グラントゥーリズモにはモデナとトロフェオが用意されていたが、グランカブリオはトップモデルにあたるトロフェオのみが用意される。その最高出力は550ps、最大トルク650Nmなので、オープンエアとともにかなり強烈な体験ができそうだ。
基本は至極快適でも、二面性が楽しめる
オープンカーを愉しむには生憎の天気であったが、まずは幌を閉めたままで走り出してみる。ドライブモード「コンフォート」を選択して走っていると、ソフトトップとは思えないほど静粛性も高く、ゆったりとしたラグジュアリークーペらしい乗り味を楽しめる。

フロントミッドシップに搭載された「ネットゥーノ」エンジンは、F1由来のテクノロジーを採用する。
しかし、一度コーナーを抜ければ、エンジンが前車軸よりもだいぶ後ろに搭載されている恩恵として回頭性の良さを実感することになる。さらに前後重量配分51:49(クーペは52:48)からも素性の良さは隠せない。快適性重視と言っても、スポーツ性もまったくスポイルしていないことがわかる。
その本領を味わうためにも、雨が弱くなったタイミングで幌を開けてみた。ドライブモードを「トロフェオ」に切り替えて走り出せば、背後から聞こえる快音に、思わず、アクセルペダルから右足が離せなくなる・・・のは問題だが、積極的に踏んでいきたくなることは間違いない。ただし、それはこのクルマが大パワーでも路面を追従できるほどのトラクション性能とハンドリングの良さを持ち合わせているから可能なこと。
2025年にはBEVの「フォルゴレ」を全モデルに導入する予定のマセラティ。フォルゴレの圧倒的なパフォーマンスも楽しみだが、純エンジン車ならではの官能性はネットゥーノを搭載するトロフェオならでは。いま、五感を刺激するのは、間違いなく後者だ。

タッチスクリーンの操作でソフトトップの開閉が14秒でできる。50km/h以下なら走行中でも可能。
【グランカブリオトロフェオ主要諸元】
●Engine 型式:670053492 エンジン種類:V6DOHCツインターボ 排気量:2992cc ボア×ストローク:88.0×82.0mm 圧縮比:11.0 エンジン最高出力:404kW(550ps)/6500rpm エンジン最大トルク:650Nm(66.2kgm)/ 2500rpm燃料・タンク容量:プレミアム・70L ●Dimension&Weight 全長×全幅×全高:4966×1957×1365mm ホイールベース:2929mm トレッド前/後:1646/1660mm 車両重量:1970kg 最小回転直径:12.4m ラゲッジルーム容量:310L ●Chassis 駆動方式:4WD トランスミッション:8速AT ステアリング形式:ラック&ピニオン サスペンション形式 前/後:ダブルウイッシュボーン/マルチリンク ブレーキ 前/後:Vディスク/Vディスク タイヤサイズ 前:265/30ZR20・後:295/30ZR21 ●Price 車両価格:31,200,000円