2011年2月、メルセデス・ベンツCLSがフルモデルチェンジされ、2代目となって日本に上陸した。大ヒット作となった初代から一転、4ドアクーぺ路線を引き継ぎながらも、また新しい境地へと大きくアップデートされていた。その内容はどういうものだったのか。ここでは軽井沢で開催された国内試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年7月号より)

高効率と高性能を両立したブルーダイレクトエンジン

改めて、新型CLSクラスの概要をおさらいしておこう。日本上陸を果たしたのは、まず350ブルーエフィシェンシーと63AMGの2機種で、550の導入は生産の関係で少しズレ込むという。

初代CLSクラスもそうだったが、日本市場ではどうしても新世代の直噴V8ツインターボ+7速AMGスピードシステムMCT(S63&CL63に搭載済み)を積む後者にばかり注目が集まってしまう(たしかにスーパーカー顔負けの性能だ)が、語るべき要素が多いのはむしろ前者、350である。

何と言っても、新しいパワートレーンだ。メルセデスのミッドレンジ以上において次世代を担う乗用車用ガソリンエンジンを積んだ、第三世代の直噴システムを採用する「ブルーダイレクト」エンジンである。

効率化と快適性の実現のため、V8とのモジューラー化を捨てて、バンク角を60度とした。このV6には、最大圧力200barの最新ピエゾインジェクターとスプレーガイド式燃焼システム、マルチスパークイグニッション制御を組み合わせた最新の直噴システムが積まれており、リーンバーン燃焼と均質燃焼、さらにはストイキ燃焼と均質燃焼といった燃焼モードを自動かつ効果的に制御するという優れもの。これにアイドリングストップシステムと、従来のCモードに代わってEモードを通常モードとする7Gトロニック・プラスを組み合わせたことにより、高性能と高効率の両立を図っている。

また、電動ダイレクトステアリングもついに採用。これはプレミアムクラス初の試みで、ドライバビリティとエフィシェンシーの両立を図った進化として注目しておきたい。

そのほか、旧型に比べてのボディ&シャシや安全装備の進化はEクラスに準じるもの。すなわち、現代の乗用車界においてほとんど最高レベルのスタンダードが備わったと言っていい。

昨年の秋、フィレンツェ郊外で試乗済みだが、改めて日本仕様を新緑の奥軽井沢で試す。フィレンツェで気になったいくつかのポイントが日本仕様で改善されているかどうかも要チェックポイントだった。

試乗車にはオプションのAMGスポーツパッケージが施されており、見た目の変化はもちろん、エアマチックサスペンション+19インチタイヤを装備するなど、中身も違う。結論から言うと、このパッケージはオススメ、大プッシュのオプションだ。

なにしろ、そのライドフィールはEクラスをより洗練にスポーティに仕立てたもので、フラット感がかなり増し、街中から高速道路まで、上質な弾みに満ちた、信頼と安心に応える走りに終始する。個人的には、アシの応答性に自然な早さが備わっているぶん、Eクラスよりも気に入った。スポーツ/ノーマル、いずれのモードでも乗り心地よく、快適なのは、このところ熟成の進んだエアマチックサスならでは。

それに比べると、金属バネのノーマル仕様には、スポーティさが顔を覗かせたぶんだけ、走りの質感に粗が出る。バタつく、とまでは言わないが、エアサス仕様に比べて確実にクルマの密度が緩い。一体感で劣っている。

新しいV6エンジンのフィーリングには好感をもった。滑らかによく回り気持ちいい。高回転域までよどみなく回る。特に実用域の力の応答性と、積極的にアクセルペダルを踏み込んだときの澱み・雑味のなさも特筆できる。微速域でのマネージメントも、昨秋のイタリアに比べると上手になった。

秀逸だったのは、アイドリングストップ。停止/再始動とも、早さはもちろんのこと、フィールが素晴らしい。いかにもエンジンを掛け直しました、という音や振動がない。これこそ高級車のアイドルストップで、Sクラスハイブリッドのそれを凌いでいる。 

もうひとつ、フィレンツェで気になっていたEモードにおけるかったるさも、随分と改善されたように思う。乗った瞬間から、まるで「昔のベンツ」に戻ったような動きの鈍さがなくなり、少なくとも「進まない!」という感じはしない。上り坂ではそういう印象になるが、フィレンツェでは全域でスタート時にはそう思えたから、恐らく、そのあたりの制御(走りとエコのバランス)が煮詰まったのだと思う。

気になったままのポイントも、もちろんあった。それは電動化なったダイレクトステアリングの功罪だ。キレ味鋭い微速域と超安定志向の高速域などはダイレクトステアの魅力だが、電動化によって日本の常用域、つまり50km/h前後ではステアリングフィールに違和感を覚えるというもの。とくに、切ったあとの味付け、ハンドルが戻っていくときのおしつけがましさが不快である。他ブランドでもよくあることで、それ以外の速度域では何とも感じなかったから、この速度域あたりに電動パワステのちょっとした制御困難域が潜んでいるのかも知れない。

クルマとしての進化は、なるほどメルセデス流。そこに心配はほとんどない。興味深いのは、女性から男性へと変わったかのようなスタイリングを、世の好事家がどう思うか……。想像だが、先代とは少し様相が違って、メルセデスシンパによりウケが良さそうな気が、しないでもない。(文:西川 淳/写真:村西一海)

画像: CLS350 BlueEFFICIENCYのインテリア。電動ダイレクトステアリングを採用、COMANDシステムも新世代に進化した。

CLS350 BlueEFFICIENCYのインテリア。電動ダイレクトステアリングを採用、COMANDシステムも新世代に進化した。

メルセデス・ベンツ CLS350 BlueEFFICIENCY 主要諸元

●全長×全幅×全高:4940×1880×1415mm
●ホイールベース:2875mm 
●車両重量:1750kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:3497cc
●最高出力:225kW(306ps)/6500rpm
●最大トルク:370Nm(37.7kgm)/3500-5250rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR 
●車両価格:930万円(2011年当時)

メルセデス・ベンツ CLS63AMG 主要諸元

●全長×全幅×全高:4995×1880×1410mm
●ホイールベース:2875mm 
●車両重量:1900kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:5461cc
●最高出力:386kW(524ps)/5250-5750rpm
●最大トルク:700Nm(71.3kgm)/1750-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:FR 
●車両価格:1645万円(2011年当時)

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