2011年3月、「世界一美しいクーぺ」と称された初代以来、3代目となるBMW 6シリーズクーペがジュネーブオートサロンで発表された。1月のデトロイトショーで先行デビューしていた6シリーズカブリオレモデルに続き、満を持しての登場だった。BMWにとって6シリーズクーペとはどんな存在だったのか。ここではドイツ・ミュンヘンで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年9月号より)

洗練されたハイテクを生かした滑らかな快適さ

6シリーズクーペのモデルラインナップはカブリオレと同じで4.4L V8ツインターボエンジンを搭載する650iと650i xDrive 、そして3L直6ターボエンジン搭載の640i、3L直6ツインターボディーゼルエンジン搭載の640dという4モデル。

今回の試乗会でハンドルを握ることができたのは640iクーペ。この排気量2979ccの直列6気筒ガソリンエンジンには、直噴システム、バルブトロニック、ダブルVANOS、ツインスクロールターボなどといった、最新のBMWならではのハイテクがフルに搭載されている。

その最高出力は5800〜6000rpmの間で320ps、最大トルクは1300〜4500rpmという広い範囲で450Nmを発生する。

組み合わされる標準搭載のトランスミッションは、ZF社製の8速スポーツAT。カタログ性能は0→100km/h加速が5.4秒、最高速度は250km/hで、これはリミッターによって制御されている。

まずは、アウトバーンを使ってミュンヘン空港方面へと向かう。さすがに1300rpmからすでに最大トルクを発生するターボエンジンのおかげで、軽くアクセルペダルを踏み込んでいくだけで、力強く圧倒的な加速が始まる。それとともに周囲の流れは、後方へと消え去って行き、そのまま踏み込んでいれば最高速度の250km/hにあっという間に到達し、無慈悲にもリミッターが介入する。

8速ATはスムーズそのもので、アウトバーン上での追い越し時も、まるで無段変速機を搭載しているかのように滑らかな加速を見せてくれる。

岩のように頑強な直進安定性とともに、車線変更ではオプションで用意されているインテグラルアクティブステアリングのおかげで、ほとんど手首の動きだけでスパッとレーンチェンジが可能になる。リアタイヤは最大で2.5度ステアするのだが、直進状態へ戻る時に「より戻し」などは起こらない。

カブリオレと比べると格段に高いボディ剛性を持ったクーペのシャシは、ずっとダイナミックなセッティングが与えられている。その軽快で正確なハンドリングによって、クルマの大きさを忘れてしまうほどである。

試乗車に装着されていたタイヤはオプションの19インチサイズで、フロントに245/40R19、リアが275/35R19であったが、ワンダリングなどは感じられず、乗り心地もまったく問題はなく、終始快適であった。

またこの6シリーズには、オプションで4種類のプログラムを持ったドライブロジックが用意されている。新しい点は標準状態が「コンフォート」になり、「スポーツ」と「スポーツ+」の他に、「ECO PRO」と名付けられたエコモードが加わったことだ。

このエコモードを選択すると、エンジンキャラクター、アクセルペダル操作の反応、シフトタイミングがそれぞれ低燃費指向にプログラムされる。Dr.ドレーガーは実用燃費で20%は向上すると説明したが、走らせてみても、とくに気になるような点はなかった。ちなみに19インチタイヤ仕様でのカタログ燃費は、100kmあたり7.8L、単純計算で12.8km/Lとなる。

発売時期は世界全域統一で10月15日とのこと。参考までにドイツでの価格は7万4700ユーロ(19%の付加価値税込:約859万円)となっている。(文:木村好宏)

画像: BMWのアッパークラスに位置するラインナップに相応しい設え。助手席側のダッシュボードからセンターコンソールへと流れるラインが印象的。

BMWのアッパークラスに位置するラインナップに相応しい設え。助手席側のダッシュボードからセンターコンソールへと流れるラインが印象的。

BMW 640i クーペ 主要諸元

●全長×全幅×全高:4894×1894×1369mm 
●ホイールベース:2855m 
●車両重量:1735kg
●エンジン:直6DOHCターボ
●排気量:2979cc
●最高出力:235kW(320ps)/5800-6000rpm
●最大トルク:450Nm/1300-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●0→100km/h加速:5.4秒
●最高速度: 250km/h
※EU準拠

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