2011年7月、ルノーから「OPEN&PLAY」をコンセプトに開発された2シーターオープンスポーツカー「ウインド」が登場して話題となった。ミッドシップのようなスポーティなプロポーションや、外観から想像される以上に硬派な走りが意外性たっぷりだった。Motor Magazine誌では上陸間もなく試乗テストを行っているので、その時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2011年10月号より)

ベースはトゥインゴ・ゴルディーニRS

ルノー ウインドはその名前からイメージするとおりの小さなオープン2シーターモデルだが、その成り立ちはとてもユニークで、驚かされることが多い。

開発を担当したのはルノースポールで、ベースはなんとトゥインゴ・ゴルディーニRS。最大の特徴はオープン2シーターということだが、ホイールベースやトレッドなど骨格となるサイズはトゥインゴ・ゴルディーニとまったく同じで、シート位置まで同じ。こうなると、ドアと後輪の間に後席分のスペースがあるので、このまま2シーターにすると、まるでミッドシップのようなプロポーションとなる。しかもキャビン後方にエアスクープのようなものまで設けて、ここにエンジンがあるかのように見せている。これもフランス流のエスプリなのだろうか。

電動開閉式のルーフは、Bピラー上を支点に後方にぐるりと反転して2重構造のトランクリッド内に収まる構造で、トランクルームはトップの開閉に関係なく270Lという容量が確保される。トップの開閉のためには室内にあるロックを手動で操作しなければならないが、開閉にかかる時間はわずか12秒と短い。ただし、開閉はトップのみで、フルオープンというよりもタルガトップといった雰囲気だ。

画像: 組み合わされるトランスミッションは5速MTで、左ハンドルのみとなる。ルーフの開閉スイッチはシフトレバーの奥にある。

組み合わされるトランスミッションは5速MTで、左ハンドルのみとなる。ルーフの開閉スイッチはシフトレバーの奥にある。

回すほどに元気が出てくるルノースポールらしい走り

全長3.8mちょっとのオープン2シーターというスタイリングから「手軽にオープンが楽しめるクルマ」というイメージがあるが、乗ってみると、意外や硬派というか、本格的なことにまた驚く。

パワートレーンもトゥインゴ・ゴルディーニとまったく同じ。エンジンは134psを発生するNA 1.6L直4DOHCで、組み合わされる5速MTも同じ。ギア比や最終減速比も変わらない。左ハンドル仕様しか用意されないのも共通だ。

シャシもトゥインゴ・ゴルディーニと同じ、ルノーが呼ぶところの「シャシースポール」となるが、70kg車重が増加したことに伴い、スプリングやダンパーはウインド専用のチューニングとなり、ステアリングギア比もややスローな設定となっている。

インテリアは基本的なレイアウトこそ同じだが、ウインドは3連メーターを配して独自のデザインとしている。シートはヘッドレスト一体式のハイバックタイプで、サポートが深く、大ぶりで座り心地がいい。これはトゥインゴ・ゴルディーニとまったく異なるところだ。

走りは当然ながらトゥインゴ・ゴルディーニに似ている。エンジンは積極的に回すと楽しくなるタイプで、低中速域でも大きな不満はないが、4000rpmを超えたあたりから俄然元気が出てくる。足まわりもこのエンジンの特性に合ったもので、シャキッと締まっていて、低中速での乗り心地も悪くなく、それでいて攻めるとルノースポールらしくキビキビした動きを見せる。

ただし、高速巡航となると、5速MTにもう1速欲しくなる。5速100km/h走行で3200rpmほどのエンジン回転数となるので、ついついシフトアップしたくなるのだ。エンジン音は大きくなるし、燃費も心配になってくる。この種のユニークなクルマに、AT仕様や右ハンドル仕様を望むのは野暮というものだろうが、せめて6速MTがあればと思う。

もうひとつ意外だったのは、クローズド時よりもむしろオープン時のほうが元気よく感じられたこと。クローズド状態でコーナーを攻めたりするとボディのガタツキが気になることがあったが、オープンにするとボディがしなやかに動いて躍動感が出てくる感じ。オープンと言ってもフルオープンになるわけではなく、太いBピラーとリアウインドウが残るタルガトップ風で、ボディのサイドラインが高く、ドアのサポートも大きいので、ボディ剛性はこの部分で十分に確保されているのだろう。クローズ状態にすると、かえってガタツキが目立つ感じだ。

乗員にとっても適度に包まれ感があって安心感があり、しかも爽快感があるのは好ましいところ。「フルオープンは少し気恥ずかしい」というユーザーにもお奨めできる。また、リアウインドウが残ることもあって、サイドウインドウを閉めれば、風の巻き込みが少なかったことも報告しておこう。

ウインドはその外観からは想像できないほどの実力の持ち主だ。(文:Motor Magazine編集部 松本雅弘)

画像: エンジンを積極的に回すと楽しくなるタイプで、4000rpmを超えたあたりから俄然元気が出てくる。キビキビした走りとともに一般道での乗り心地も確保されている。

エンジンを積極的に回すと楽しくなるタイプで、4000rpmを超えたあたりから俄然元気が出てくる。キビキビした走りとともに一般道での乗り心地も確保されている。

ルノー ウインド 主要諸元

●全長×全幅×全高:3835×1690×1380mm 
●ホイールベース:2365mm 
●車両重量:1190kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:98kW(134ps)/6750rpm
●最大トルク:160Nm(16.3kgm)/2250-4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:255万円(2011年当時)

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