欧州車的仕立てのSUVで、明らかに新世代のシボレー車と感じさせる
GMが元気になった。そして、日本においても積極的な動きを見せ始めたことが嬉しい。やはりアメリカンブランドに活気がないと、輸入車マーケットは盛り上がらないものだ。
さてそのGMだが、とくにシボレー部門の復活振りが顕著だ。2011年上半期の販売台数は、シボレー100年の歴史において最高となる235万台を記録している。中でも好調だったのが、2009年デビューのコンパクトカーである2代目シボレークルーズで、上半期に35万台が販売された。さらにクルーズよりも小さいスパークも同期間に10万台を売り上げている。実はシボレー快進撃の立役者となっているのは、グローバルに展開されているこうしたコンパクトモデルなのだ。コルベットやカマロももちろん結構なのだが、新世代のシボレーは新たな顔も持つというわけだ。
こうした背景を理解した上で、キャプティバを見ると“なるほど”と思うことが多い。スタイリングから乗り味など全体的なフィーリングに、あまり“アメリカン”を感じさせない。前述のコンパクトモデルと同様、キャプティバは明らかに新世代のシボレー車なのだ。とくにキャプティバが狙っているのは欧州市場であるというから、全体的にこうした仕立てになったことも納得できる。アメリカンを好むユーザーには同じアーキテクチャーを使ったキャデラックSRXがあるからこれでいいのだろう。また、日本には欧州車的仕立てのSUVを好むユーザーが多いので、キャプティバを導入したという判断も適切だと思う。新たな顧客を開拓できる可能性がある。

ルーフからDピラーにかけて滑らかにラインが流れる。洗練された実にまとまりのよいスタイリングと言っていいだろう。
万人受けするデザインとよくまとまったパッケージング
さて、試乗の印象をお伝えしよう。全長×全幅×全高は4690×1850×1790mmで、BMW X3とアウディQ5と同クラスと言える。日本の都市部でも大きくて持て余すことはないサイズだ。搭載エンジンは2.4Lの可変バルブタイミング機構を持つ直4DOHCで、最高出力/最大トルクは167ps/230Nmを発揮。決してパワフルではないが車重は同クラスのモデルに比べて重くはないこともあり、試乗した都市部の平坦路ではストレスなく走ってくれる。トランスミッションは6速ATで、これもきわめてスムーズだ。サスペンションは堅めでしっかりした印象で、この辺りに欧州市場をターゲットにしたことを感じさせる。走りについては全般にそつがなくよくまとまっているが、もう少しステアフィールにメリハリが欲しい。そこを改善するだけでかなりスポーティな印象になると思う。
SUVにとっては重要な4WDのシステムだが、キャプティバが採用しているのは“アクティブ・オンデマンドの電子制御AWD”で、通常走行時の駆動力は100%前輪に伝えられ、必要に応じて電子制御クラッチを介し後輪へ最大50%の駆動力が伝えられる。また、走りに関わるデバイスとしては、ESC(エレクトリック・スタビリティ・コントロール)、BAS(ブレーキ・アシスト・システム)、HSA(ヒル・スタート・アシスト)、DCS(ディセント・コントロール・システム)を標準装備する。
デザインとパッケージングについてだが、スタイリングは特徴的なフロントグリルをはじめとして、いかにも新世代シボレーと感じさせ、よくまとまっている。アクは強くないので万人受けするだろう。キャビンもシートアレンジ、収納スペースなども含めてよくできている。ただインパネまわりのデザインは少々武骨な印象で、またナビのモニターは下にあるので見にくい。上のエアコンモニターと逆であればよいと思った。
さて、このキャプティバの開発はGM韓国を中心に行われており、生産もGM韓国が担当する。効率的なグローバル展開を繰り広げる現在のGMらしいところだが、注目は価格設定にある。欧州の同クラスSUVの半額と言ってもよいレベルの354万円だ。日本における輸入車は“安ければ売れる”というものではないが、価格競争力が抜群に高いことは確かであり、売れ行きに注目したい。(文:Motor Magazine編集部)

インパネまわりのデザインはシンプルで機能的だが、少々武骨な印象。トランスミッションは6速ATで、マニュアルシフトすることも可能だ。
シボレー キャプティバ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1850×1790mm
●ホイールベース:2710mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:2382cc
●最高出力:123kW(167ps)/5600rpm
●最大トルク:230Nm(23.4kgm)/4600rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:354万円(2011年当時)